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親の不動産を相続してどうすべきか困っていらっしゃる人も多いでしょう。あるいは、高齢の親から相続の話をされて、今から準備をしている方もいるかもしれません。
「資産価値の高い不動産」ゆえに相続税や売却したときの所得税や住民税に悩んでいる方もいらっしゃるかと思いますが、逆に「資産価値が低すぎるがゆえの悩み」もあります。
今回は、地方にある、築年数が古すぎる、駅から遠いなどで活用や売却が難しい「親の家」の対処についてご紹介します。
親の家、相続したらどうする?
基本の選択肢は「住む」「貸す」「売る」
相続や生前贈与などで親の家やマンションを譲り受けた場合、一般的にはとるべき選択肢は「住む」か「貸す」か「売る」になるかと思います。どれを選ぶべきかについては当サイトの「親の家の処分を間違えるとこんなことに。失敗しない3つの秘訣」にありますので、まずはこちらを参考になさってください。
しかし、なかには「この3つの選択肢のどれも無理そう!」と思った方もいるかもしれません。地方にあるとか古すぎるとか首都圏でも駅から遠いなどの理由で、自分で住むことも貸すことも売ることも難しそう…… そんな親の家を抱えていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。
実際、地方にはこのような住むことも貸すことも売ることもせずそのまま放置されている「空き家」がたくさんあります。
こうした空き家が増えることで景観と治安の悪化、建物の倒壊などが起きると予想され、空き家は今、社会問題化しているのです。この「空き家問題」は地方だけでなく、首都圏の千葉、埼玉、神奈川県などにも起き始めています。
「貸せない」「売れない」は思い込み!?
筆者は8年前に東京から地方に移住し、その間、賃貸住宅3軒に住み、現在は戸建を取得しています。地方の不動産の賃貸・売買の両方の事情を知る立場からしますと、「貸せない」「売れない」の理由のひとつには所有者の勝手な思い込みがあるようにも思います。
筆者が地方に移住しようと思ったとき、庭付きの戸建を探しましたが、アパートはあれど、借りられる戸建はほとんどなく、非常に苦労したものです。地方には空き家はたくさんあるのですが、「貸家」はなぜか多くありません。
先祖代々の土地だから他人に貸したり売ったりするのが嫌だという心情もあるかもしれませんが、「こんな古い家、誰も借りないだろう」と最初から決めつけていたり、貸すにはリフォームが必要と思い込んでいたりするのが原因ではないかと思います。
こんなちょっとした工夫やアピールのしかたひとつで、リフォーム不要で借主や買主が見つかることもありますので、以下にその一例をご紹介しましょう。
古い家も駅から遠い物件もこうすれば貸せる!
1. DIY可能物件として貸す
家が古い、田舎にある、都心部だけど駅から遠いなどの物件はこのような条件をつけることで借主が見つかることもあります。
古い家を誰かに貸すにはきちんとリフォームをしてからでないといけないと思っているかもしれません。しかし、中には中途半端なリフォームをされた部屋に住むくらいなら、自分で好きなようにリフォームしたいと考える人も多いもの。
最近ではそのような借主のための「DIY可能物件」も賃貸市場に多く見られるようになりました。借主は、建物の構造に影響を与えない範囲で自由にリフォームができ、「原状回復」の義務もありません。
借主は自分の好きなようにリフォームできるし、貸主はリフォームの費用を負担する必要がなく、お互いにメリットがあります。さらに貸主には、借主さんが退去した後はすっかりキレイにリフォームされた家が戻ってくるので一石二鳥です。
リフォームを施していないので、高い家賃はとれませんが、借り手がつくかどうかわからない家のリフォーム代をかけるよりは賢明な選択といえます。都心では増えている「DIY可能物件」も地方ではまだ少ないので、試してみるのもいいのではないでしょうか。
2. ペット可物件として貸す
最近ではペット可の賃貸住宅も少しずつ増えてきました。しかし、小型犬までとか、2頭までなど、大きさや頭数が限定されている場合がほとんど。何らかの事情でペットが増えてしまったという方は家探しにとても苦労しているのです。
ペットは家族同様ですから、大型犬、犬・猫2頭以上もOKの家があれば、多少古かろうが駅から遠かろうが借りてくれる可能性は高まります。
ペットがいることにより部屋の汚れや損傷が激しくなることが予想されますが、そのぶん敷金を多めに設定するなどで対処できます。
「ペット可」以外にも、首都圏の「屋根付き駐車場」とか「ガレージ付き戸建」の物件もバイク好きやクルマ好きに人気があります。こういう人たちは生活の足がバイクやクルマなので、駅から多少遠くても気にしません。
相続した不動産の売却を迷ってる人にはこんな意外な売却法も!?
1. 戸建ではなく「古家付き土地」として売る
「売却したいけど、こんな古い家、売れるの?」という人にはこんな売却方法もあります。
戸建として売るには古すぎるという場合、「土地」として売却する方法もあります。それには家を壊して更地にしなくてはならないからと二の足を踏んでいる方もいらっしゃるかもしれません。
木造家屋の解体費用は坪あたり2~4万円とのことですから、地方のある程度大きな家ともなると100万円くらいはかかるでしょう。売れるかどうかもわからないのに大金を投じるのはちょっと勇気が要ります。
しかし、このような土地は「古家付き土地」として売却すればいいのです。「古家付き土地」はその名のとおり、古い家が建っている土地のこと。その古い家を活用するも解体するも買主さん次第ですよ、という販売方法です。
買う側からすれば、土地だけの値段で古い家もオマケについてくるので、上手にリフォームすれば格安で戸建が手に入ることになります。
2. 貸しながら売る「オーナーチェンジ」
「思い出の詰まった実家だから、売却するか迷っている」という人にはこんな売却方法もあります。
貸すか売るかで迷っているなら、まずは貸してみて、借主がいるまま売却するという方法もあります。これを不動産の用語で「オーナーチェンジ」といいます。
この方法は、たとえば実家をすぐに売却することに兄弟が反対しているときなどに有効です。
購入した人は、自分自身はその家に住めませんが、新しいオーナーとして住んでいる人から家賃を得ることができます。通常は賃貸用の物件を購入したら、オーナーは不動産仲介会社を通して借主を探さなくてはなりませんが、オーナーチェンジ物件は借主がすでにいる状態ですから、すぐに家賃収入が得られるというメリットがあります。
購入する人は投資が目的ですので、投資した金額に見合う家賃がとれるように売却価格を決めることがポイントです。
本来であれば、空き家の状態になってから3年以内に売却すれば「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」が受けられるので、お勧めなのですが、売る決心がつかないときには、「まずは貸してみる」のもよいかと思います。
「住む」「貸す」「売る」以外の道「資産活用」
実は不動産には「住む」「貸す」「売る」以外にもいろいろ活用方法があります。
首都圏の立地のいい場所の資産活用としては、更地にしてアパートを建てるというのがこれまでの定石でした(今後は人口減なので、慎重にすべきですが)。
地方でしたら観光地に近ければ「民泊」として運用したり、太陽光パネルを設置して売電したりなども考えられます。
「貸す」も「資産活用」のひとつですが、資産活用する場合には、活用して得られる収入が、固定資産税や修繕費など不動産を維持するのにかかる費用より多くなることが大事。これが売るか、活用するかのひとつの判断材料になると思います。維持費のほうが大きい場合は売却するひとつの考え方です。
一番やってはいけないのは親の家を「そのまま放置」!
空き家は持っているだけでお金がかかる
以前、あるタレントさんが地方にある実家を維持するのに25年で1800万円かかったという話をテレビでしていらっしゃいました。固定資産税や実家を掃除するための往復の飛行機代、リフォームなどを合計するとこのくらいかかっていたことが判明したのだとか。彼女は実家をやっと売却して、ホッとされているようでした。
資産価値の低い不動産を「売っても貸してもどうせたいしたお金にはならないのだから」とそのまま放置しておくと、たいしたお金にならないどころか大きな出費になってしまうのです。
親から不動産を譲り受けたら、活用するか売却するか早めに決断し、決して「空き家」にすることのないようにしたいものです。