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不動産を売却する前に!譲渡所得税について知っておこう

不動産スタッフ

目次

マイホームの買い替えなどの不動産売却で利益が出た場合、利益に対して税金がかかります。この税金は「譲渡所得税」と呼ばれるもの。会社からもらう給与とは異なる収入となり、自分で確定申告をする必要があります。税金と聞くとそれだけで難しいイメージがあるかもしれませんが、しっかりと理解しておくことで納付する税金をお得にすることも可能です。

この記事では、不動産を売却する際の譲渡所得税について、その内容や計算方法について詳しく解説しています。これから売却する方だけでなく、マイホームを購入しようとしている方にとっても将来的に重要な内容です。ぜひ参考にしてください。

※ 調べやすいように、記事内で割愛している詳しい条件・用語は国税庁のホームページと同一のものにしております。

譲渡所得税とは

家や建物、土地などを売却して利益が出た際にかかる税金。これを譲渡所得税と言います。譲渡所得税とは通称で、実際には「譲渡所得税」という名称の税金はありません。不動産を売却して得た利益に対してかかる所得税と住民税を合わせて譲渡所得税と呼んでいます。また、2037年までは所得税に対してさらに復興特別所得税もかかるので注意です。ここでは、「不動産を売却して利益が出れば税金がかかる」と頭に入れておいてください。

不動産を売却しても利益が出ない場合

不動産を売却して利益が出ればそれに対して税金がかかる。そう聞くと「利益が出なかった場合はどうなるのか?」と疑問が浮かんだ方も多いのではないでしょうか。

実際には購入したときの金額より高い金額で売れないこともありますので、まずは不動産を売却しても利益が出ない場合について説明します。このケースでは、譲渡により損をしているため「譲渡損失」と言います。結論から言うと、譲渡損失に関しての税金は所得税(復興特別所得税含む)・住民税ともにかかりません

しかし、これはあくまで不動産売却に関するもののみが対象です。不動産売却に関する所得は分離課税と呼ばれ、給与所得や事業所得とは切り離して考える必要があります。つまり、不動産売却により損失が出ても、給与所得や事業所得に対しては所得税や住民税はかかるので注意してください。

課税譲渡所得金額の計算方法

譲渡所得税という税はなく、正しくは不動産を譲渡したことによる利益に対してかけられる所得税と住民税です。つまり、不動産を売却して利益が出た場合の税金は、その利益(=所得)がいくらかが分かれば計算できます。

不動産売却により課税対象となる金額を「課税譲渡所得金額」と呼びますが、この金額は単純に不動産が売れた金額とイコールではありません。課税譲渡所得金額は、購入した際の土地や建物の代金に加え、売買の際にかかった不動産業者への仲介料などの経費や一定の条件を満たすと適用される特別控除を差し引いて計算されます。課税譲渡所得金額を計算する式は以下のようになります。

「課税譲渡所得金額=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除」

実際の税額は、この計算式によって導き出されたものに税率をかけて算出。税率は条件によって異なってきますので、詳しくは後述します。

譲渡価額

譲渡価額とは、不動産の売却価格のことです。

取得費

取得費とは、不動産を購入する際にかかった土地や建物の購入代金や仲介業者などにかかったその他の費用の合計額です。しかし、建物は新築時から年月とともに価値が目減りしていく償却資産とされています。取得費を計算する際には、建物の購入代金から目減りした分の金額である減価償却費を差し引くことを忘れないようにしてください。

たとえば木造の建物の場合、耐用年数が22年、償却率が0.046と決まっています。これは22年かけて建物自体の価値がなくなっていくということです。1億円で購入し、10年経って売却を考える場合は、「1億円×0.046×10=4,600万円」が減価償却費となりますので、不動産を購入する際にかかった代金や費用からさらに4,600万円を差し引いたものが取得費となります。

古くから所有していた書類などがなく、取得費が分からない場合は、売却した金額の5%が取得費です。ちなみに土地については年月とともに変化しませんので減価償却されません。

譲渡費用

譲渡費用とは、不動産売却するためにかかった費用のことです。具体的には仲介手数料や土地の測量費、建物を取り壊して土地を売った場合の取り壊し費用、アパートなどで部屋を貸していた場合には売却に際して支払った立退料などが該当します。

特別控除

課税対象となるのは、所得から経費や控除を差し引いた金額です。特別控除とは一定の条件を満たした場合に税金が軽減される特別サービスのようなものと考えれば分かりやすいでしょう。続いて、不動産の譲渡所得に対して適用されるそれぞれの特別控除について紹介していきます。

居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

マイホームなどの自分が住んでいるまたは以前に住んでいた家を売却する場合に適用される特別控除です。所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで差し引くことができます。つまり、譲渡所得が3,000万円以下になる場合は税金がかかりません

マイホームを売ったときの軽減税率の特例

10年以上所有していたマイホームを売却した場合、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は、通常よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

親から相続した空き家を売却した場合に、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。これは「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは同時に適用はできません。しかし、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」とは重複して適用できます。

監修者から

この特例については、期間にも注意してください。所有期間は被相続人が所有している期間も加算されます。しかし、被相続人と同居していない場合は「居住用」の要件を満たしません。したがって、相続人はその家に住まなくなってから3年目の年末までに売却しなければ、この10年超所有軽減税率の特例は受けられなくなります。もしも同居しなければ、相続時から3年目の年末までです。更に詳しい内容は下記の記事に掲載しています。

 

特定のマイホームを買い換えたときの特例

「マイホームを買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は、課税を将来に先送りできるもの。当初は2019年12月31日までに不動産を売却していることが条件でしたが、2年間の延長が発表されました。よって令和3年12月31日までの売却分まで適用があります。詳しくはこちらをご覧ください。

税額の計算方法は不動産を長期所有したか短期所有したかで異なる

「課税譲渡所得金額=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除」で得た数値に定められた所得税や住民税の税率をかけていくことになるのですが、この税率は不動産の所有期間によって異なってきます。

5年を超えた所有期間があれば「長期譲渡所得」となり税率が低く、5年以下の所有期間であれば「短期譲渡所得」となり税率が高くなります。所有期間は「譲渡した年の1月1日現在まで」の所有期間で決まり、実際の所有期間とは異なることがあるので注意してください。

長期譲渡所得となる場合

長期譲渡所得の場合の税額の計算式がこちらです。

「譲渡所得×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)」

長期譲渡所得については、不動産の所有期間が10年を超えていると譲渡所得のうち6,000万円以下の部分については、「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」が適用されて

「譲渡所得×14.21%(所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%)」となります。

例:20年前に購入した土地・建物(マイホーム)の譲渡価額(売却価格)が2億円、取得費(建物は減価償却費を控除した後)が1億2,000万円、譲渡費用500万円の場合

「課税譲渡所得金額=譲渡価額-取得費-譲渡費用-特別控除」の式にあてはめると

譲渡所得=2億円-1億2,000万円-500万円=7,500万円

7,500万円のうち、6,000万円は軽減税率が適用され残りの1,500万円は長期譲渡所得の税率が適用されます。

6,000万円に対しては

6,000万円×14.21%=852万6,000円

1,500万円に対しては

1,500万円×20.315%=347万2,500円

となります。支払うべき税金は所得税・住民税・復興特別所得税の合計です。「852万6,000円+347万2,500円=1,199万8,500円」の納付が必要になります。

短期譲渡所得となる場合

短期譲渡所得の場合、税額の計算式は以下のようになります。

「譲渡所得×39.63%(所得税30%+住民税9%+復興特別所得税0.63%)」

長期所得の説明の際に例にした同じ不動産で、短期譲渡所得の場合の税額を計算してみます。

例:3年前に購入した土地・建物(マイホーム)の譲渡価額(売却価格)が2億円、取得費(建は減価償却費を控除した後)が1億2,000万円、譲渡費用500万円の場合

「譲渡所得=2億円-1億2,000万円-500万円=7,500万円」となり、長期譲渡所得の場合と金額自体は同じですが、所有期間が5年以下ですので長期譲渡所得にはなりません。また「マイホームを売ったときの軽減税率の特例」も適用不可。

所得税・住民税・復興特別所得税の合計は「7,500万円×39.63%=2,972万2,500円」となり、長期譲渡所得の場合の約2.5倍もの税額となります。

まとめ:税金の仕組みを理解すれば、納付金額を抑えることも可能

この記事では以下の内容を紹介しました。

納付の際に所得税の確定申告を行えば、住民税については改めて手続きをする必要はありません。会社に勤めていて給与所得がある場合は勤務先が給与から天引きして納付してくれます。フリーランスなどの自営業の場合でも、申告した年の5月以降に自治体から納付書が送られてきます。ちなみに納付書は一括払いのものと年4回の分割払いのものが同封されているので、どちらかを選んで支払うことになります。

譲渡所得の所有期間の区分など、税金の仕組みを理解することで納付する金額を抑えることも可能です。しっかりと知識を身につけて損をしないようにしてください。

監修者:鈴木 良紀

経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧

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