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不動産は、売却後にトラブルになってしまうことが少なくありません。トラブルが多いのは、不動産が高額な商品だからでしょう。しかし、売主はできるだけ売却後のトラブルを避けたいですよね。
あらかじめ、どんなトラブルに発展する可能性があるかを把握しておけば、多くのトラブルを避けられますので、この記事では代表的な4つの不動産トラブルを紹介します。また、2020年4月に行われた民法改正についてもお伝えしていきます。
不動産売却と瑕疵担保責任
不動産売却後のトラブル理由の1つは、売主に売却物件の瑕疵担保責任を負う必要があるからです。瑕疵とは簡単に言うと「隠れた欠陥」のこと。買主が物件を購入した後に、瑕疵があるのを見つけた場合、売主は該当の瑕疵に責任を負う必要があります。
しかし、売主がいつまでも責任を負うのは大変です。そのため、売買契約時に「瑕疵担保責任を負う期間を引渡しから〇カ月以内とする」といった条文をつけます。
「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」へ
ちなみに、2020年4月1日より改正民法が施行され、これまで「瑕疵担保責任」だった売主の責任は「契約不適合責任」へと名前を変えました。基本的な内容は双方とも似たものなのですが、2つの違いは後程詳しく解説します。
まずは、不動産売却時によくあるトラブルとして4つをご紹介していきたいと思います。
不動産売却時によくある4つのトラブル
公益財団法人不動産流通センターの2019年不動産統計業「主要原因別紛争相談件数」によると、2018年度に最も多かった不動産売買時のトラブルは「重要事項など」で全体の約38.3%。次いで「契約の解除」が8.7%、「報酬」が5.4%。「重要事項など」は「重要事項の不告知を含む」とされており、これは多くの場合、瑕疵担保責任の問題と考えて良さそうです。
実は、瑕疵担保責任で売主の責任を問われるのは「隠れた瑕疵」であることとされています。
隠れた瑕疵とは
隠れた瑕疵とは、売買契約時に買主が通常の注意を払ったのにも関わらず発見できなかった瑕疵のこと。買主が瑕疵を事前に告知されていた場合は、買主は売主に瑕疵担保責任を追及できなくなる可能性が高いです。
トラブル解決方法
売主の立場で考えると……この瑕疵に関するトラブルの解決方法は、専門の仲介会社に相談することです。また、住んでいて少しでも気になった点は、どんなことでも隠さずに買主に伝えること。その上で判断を買主に委ねれば、ほとんどの瑕疵に関するトラブルは避けられます。
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不動産売却時によくあるトラブル①:雨漏り
最初にご紹介する『不動産売却時によくあるトラブル』は、不動産売却後に雨漏りが発生してしまうケースです。雨漏りは『家として欠陥がある』と見なされます。ただし、雨漏りはすぐに発見できることは少なく「隠れた欠陥」であるのが一般的です。
雨漏りが発生してしまったら……
不動産売却後に雨漏れが発生した場合、売買契約書で記載した瑕疵担保責任の責任期間中であれば、売主が瑕疵担保責任を負う必要があるのが一般的です。また、マンションの場合は原因が共用部分の壁などの場合もあるので、このケースでは管理組合を交えての話になります。
こうしたことを防ぐため、売主は過去に雨漏れがあった箇所があれば、売買契約時にその箇所について告知しておくようにしておきましょう。告知しておくことで、隠れた瑕疵ではなくなり、瑕疵担保責任を負わなくてもよい可能性があります。
過去の事例を見てみると……
ただし、過去の売買事例を見てみると、仮に過去に雨漏れがあったことを告知し、その他の箇所で雨漏れが発生する可能性があることを伝えていた場合でも、売却後に瑕疵担保責任の責任期間中に実際に雨漏れが発生した場合には瑕疵担保責任を負う必要がある可能性があるとしているものもあります。
参考:不動産流通センター 雨漏りの可能性があることを告知した場合の瑕疵担保免責の効力
この参考サイトで紹介しているのは、瑕疵担保期間、雨漏りの発生時期、告知した場所などから、裁判でも非常に判断の難しい事例です。不動産を購入した買主も買った後に必ず雨漏りがあれば困るはず。そうイメージして出来る限り告知をすることが現時点では最良の策と言えるでしょう。
不動産売却時によくあるトラブル②:事故物件
過去に人が死んでいたり、何らかの事故が起こっていたりする物件の場合、そのことを告知すると買い手がいなくなると考え、告知したくないと考える方もいるでしょう。しかし、買主が後で事故物件であると知った場合、売主は買主に対して瑕疵担保責任を負う必要があります。
いわゆる心理的瑕疵です。なお、売主は瑕疵があることを知りながらそのことを告げなかった場合、たとえ瑕疵担保責任の責任期間を過ぎていたとしても、瑕疵担保責任を負わなければなりません。
基本的に不動産売却時には、瑕疵になりそうなことは全て告知すると良いでしょう。
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不動産売却時によくあるトラブル③:騒音問題
騒音に関する問題も不動産売買時によく起こるトラブルです。というのも、騒音問題は住む人にとって捉え方が異なり、売主にとっては問題にも感じなかったことが、買主にとっては問題と感じることもあるからです。不動産売却時には、こうしたことが起こることを想定したうえで告知しなければなりません。
不動産売却時によくあるトラブル④:契約解除
また、契約解除に関するトラブルも少なくありません。たとえば、不動産売買契約では、売買契約後に住宅ローン審査が否決になってしまい売買契約そのものが駄目になってしまうこともあります。このケースを防ぐために、手付金を全額返す「白紙解約」とする特約を付けるのが一般的です。
住宅ローン特約
この特約を住宅ローン特約と呼びますが、住宅ローン特約では期限を設けます。たとえば、売買契約から2週間を特約の有効期限としたら、2週間経過後に住宅ローンが否決となると、売主は受け取った手付金を没収することができるのです。
住宅ローン特約を盛り込むかどうかは売主の自由です。そのため、仮に住宅ローン特約を設けていなかったり、期限内での解約だったりした場合は、売買契約後に数週間期間が経過したのにも関わらず白紙解約となり、また一から買主を探さないといけなくなります。
とはいえ、住宅ローン特約は、基本的には売買契約書に記載してある通りの取扱いになります。売主として住宅ローン特約を盛り込む旨や、期限を事前にしっかり把握しておくことが大切です。
買主の立場でも話すと、期日が近づいてもローン承認が下りない場合は、期日の延長などを打診しておいてください。契約書の文言なのでしゃくし定規に解釈されれば期日が過ぎたことで解約に応じない売主もいます。
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2020年4月の民法改正で始まった「契約不適合責任」とは
ここまで瑕疵担保責任についてお話してきましたが、先述の通り2020年4月1日より改正民法が施行され、これまで瑕疵担保責任として取り扱われてきた売主の責任は契約不適合責任へと変わりました。
瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い
瑕疵担保責任は、売買の目的物にある「隠れた瑕疵」に対する責任でした。一方、契約不適合責任は、売買の目的物が「種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に買主が保護を受けるというものです。
つまり、瑕疵担保責任の場合、売買契約前に、瑕疵について買主が知らないことが条件とされていましたが、契約不適合責任は「契約書の内容に適合しているかどうか」が問われることになります。
契約不適合責任の具体例
たとえば、「雨漏りする物件」を売買するのであれば、売買契約後に雨漏りが発生しても責任を問われません。しかし、「雨漏りする物件」を「完全な物件」として売買した場合には、売買契約後に雨漏りが発生すると責任を問われます。
売主としては、より売買契約書に記載する内容が重要になったと言えるでしょう。雨漏りは住宅にはつきもののリスクですので、告知を行い、期間を定めて契約適合責任を負うことが重要です。
査定は一括査定サービスが便利
最後に……ほとんどの不動産売却は、やはり査定から始まります。しかし、複数の不動産会社に毎回査定依頼をするのはやはり面倒。だから一括で査定をお願いできるサービスの利用をおすすめします。
おすすめの一括査定サービスは、LIFULL HOME’Sが運営しているHOME’Sです。こちらは約2,800社の不動産会社が登録しておりどんな会社なのか説明も具体的です。
まとめ:不動産売却は慎重に!
不動産売却時によくあるトラブルとして4つをご紹介すると共に、2020年4月1日から施行された改正民法で取り扱われる契約不適合責任についてお伝えしました。
売買契約時によく起こるトラブルとして、重要事項説明時の不告知がありましたが、これは多くの場合瑕疵担保責任に関する問題です。契約不適合責任に変わってからは、売買の対象物が売買契約の内容に沿っているかどうかが重要視されるため、これまで以上に売買契約書や重要事項説明書に記載する内容を精査する必要があります。
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監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧