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老後になってからの住み替え対策では遅い理由を3つ紹介します。「資金さえ用意できれば、住み替えはいくつになってから可能」と考えている方も多いかもしれません。しかし、老後の住み替えは、あらかじめ想定しておかなければならない事柄がいくつかあります。ご注意ください。
老後の住み替えでは遅い理由①:住宅ローンの資金を用意しづらい
最初に注意しておきたい点は、住宅ローンなどの住み替えのための資金を用意しづらいことです。以下、詳しく見ていきましょう。
団体信用生命保険の問題で住宅ローンを組めない
まずは団体信用生命保険の問題です。団体信用生命保険とは、住宅ローン返済中に債務者が死亡した場合に、住宅ローンの残債をゼロにできる保険のこと。民間の金融機関では、住宅ローンを組むときは、この団体信用生命保険への加入を条件としているのが一般的です。
団体信用生命保険の加入時には健康状況を告知する必要があるのですが、年齢を重ねれば重ねるほど健康問題は起こりやすいものです。年を重ねてからの住宅ローンでは、この団体信用生命保険が問題となってローンを組めないケースが増えます。
なお、フラット35であれば団体信用生命保険の加入は任意です。また、十分な年収があれば団信への加入なしで住宅ローンの利用できるケースもあります。つまり、この辺が、現実的な『老後になってからの住宅ローンを組む方法』です。
団体信用生命保険はもし自分が亡くなってしまった場合に、家族などの相続人を守る手段でもあります。保険で住宅ローンがゼロにならなければその債務は相続人に相続されてしまいます。物件を売却して返済出来ればよいですが、債務が残る場合は相続人に迷惑がかかりますので、この点も注意が必要です。
そもそも収入がない
当然ですが、住宅ローンを組めば返済していく必要があり、借入時には返済していけるだけの収入があるかどうかが審査されます。老後に収入がなければそもそも住宅ローンを組めません。
ただし、この問題は親子リレーローンといって、子供と一緒にローンを組むことで問題を解消できる可能性があります。ただし、親子リレーローンを組むためには収入のある子供と一緒に家に住むことが条件となります。
退職金は老後資金として取っておくべき
退職後の住み替えであれば、住み替え費用として退職金をあてにしていることもあるでしょう。しかし、退職金は老後の資金として残しておくことも大切なことです。
老後は年金で生活していくこともできますが、あるデータによると、厚生年金を満額受け取っても夫婦2人で余裕のある生活を送れないことが多いようです。
仮に自営業の方で国民年金だった場合には受け取れる額もかなり少なくなってしまうので、この問題はより深刻になります。住み替えのための資金として退職金を使うのであれば、老後の必要な生活資金などしっかりシミュレーションしておくことが大切だといえるでしょう。
今の家はできるだけ早いタイミングで売却したほうが高く売却しやすい
住み替えでは、今の家を売却する必要があります。その際、住宅ローンの残債がある場合は、家の売却代金と手元資金で住宅ローンを完済できなければそもそも家を売却できません。基本的に、家は築年数が浅いほうが高く売却できます。
また、土地についても郊外を中心に年々地価は落ちており、早く売却したほうが高値で売却できる可能性は高いといえるでしょう。とはいえ、あまり早いタイミングでの売却だと、住宅ローンの残債が多く残っている可能性があります。
家の売却代金で住宅ローンの残債を返済できない、かつ手元資金もない場合は、住み替えローンを利用する方法もあります。
住み替えローンについて
住み替えローンは、住み替え先の家を担保に元の家の住宅ローン残債分まで融資を受けられるローンです。住み替え先の住宅の担保を超えて融資を受けることになるため、審査が厳しくなりやすい点に注意しなければなりません。
この点、住み替えローンを利用するにあたっても、できるだけ年齢が若い早いタイミングで審査を受けたほうが承認を得られる可能性は高いです。
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老後の住み替えでは遅い理由②:生活スタイルを変えづらい
老後の住み替えが難しい理由の2つ目は、生活スタイルを変えづらいことです。現役時代に仕事を頑張って、老後はリゾート地でセカンドライフを送る。そんな夢をみている夫婦も多いでしょう。しかし、実際にリゾート地に移住すると、その土地での生活にすぐに飽きてしまう方は少なくありません。
若いときの体力で老後を考えるのは危険
リゾート地での生活に飽きてしまう理由は、いくつか考えられます。単にイメージと違ったケースもありますが、よくある失敗は『自分の体力を考えていない』ことです。老後にリゾート地に移住しても、リゾート地での生活を満喫できるだけの体力がありません。結果として、慣れ親しんだ元の地域のほうが生活しやすかった……ということになってしまうのです。
もう一度やり直す時間や体力、資金がない
40代や50代であれば、リゾート地での生活を楽しめたかもしれません。また、仮に楽しめなかったとしても、体力があるので、元の生活に戻ることも可能でしょう。
しかし、老後にリゾート地に移住してしまうと、もう一度元の生活に戻るのが大変です。新たな住まいを用意するだけの資金も必要ですし、引越しやその準備などさまざまな手続きをしなければなりません。老後の住み替えで失敗してしまうと、やり直すための時間や体力、資金がない可能性が高いのです。
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老後の住み替えでは遅い理由③:失敗したときに取り返しがつかない
上記でお伝えしている通り、老後に住み替えしてしまうと、失敗したときに取り返しがつきません。これはリゾート地への住み替えに限らず、あらゆることに当てはまります。
たしかに、お金の問題や生活スタイルの問題など、住み替えは実際にやってみないと分からないものです。しかし、60代を超えてから住み替えしようとしても、仮に何らかのことが理由で失敗してもやり直ししづらいのは先ほどお伝えした通りです。老後を考えて生活スタイルを変えるような大きな住み替えを検討しているのであれば、遅くとも40~50代頃には済ませておくべきでしょう。
年を取ると賃貸を借りにくくなる問題もある
老後の住み替えでやり直しづらい理由の一つに、年を取ると賃貸を借りにくくなることが挙げられます。高齢者は孤独死の可能性が高く、オーナーによってはリスクと判断されてしまう可能性があるのです。
直接「高齢者だから」という断られ方はしないにしても、入居時の審査を落ちてしまったり、他に決まったといった連絡を受けたりすることもあります。賃貸にしても、基本的には一度借りてしまえば途中で追い出されることはそう多くないでしょう。40代~50代など早いタイミングで賃貸なり持ち家なり、住む場所を決めておくと安心できます。
老後の住み替えに潜む罠:まとめ
老後の住み替えに潜む罠として3つの事柄をご紹介しました。
本記事でご紹介した通り、老後の住み替えにはいくつもの注意点があります。老後になってから対策したのでは間に合わない可能性が高くなってしまうため、40~50代など早い時期から準備を進めていくことが大切です。
監修者:Y.Suzuki
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧