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離れて暮らす両親が他界して実家を相続した場合、すでに家族を抱え所帯を持っている人はとくに理由が無ければ、譲渡された建物を売却処分することになります。また、両親が健在中に、親の実家の売却を頼まれるケースも少なくありません。
思い出のある実家を売る経験は人生で一度きりですから、不備の出ないように売却手続きの流れや見通しを知っておくと安心できますね。この記事では、いざという時に慌てずに済むよう、実家を相続して売却処分するための手順を詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
初心者向け!親の家、実家の売却の基礎手順
実家の売却手順1:相続登記を済ませておく(他界されている場合)
後で述べる売却手続きのため、そして当該不動産に係る権利関係を確定しトラブルを避けるため、全ての手続きの前に相続登記を済ませておくことが強く望まれます。
相続登記とは?
相続登記とは亡くなった被相続人(親)の所有であった不動産、つまり実家を相続によって承継したあなたが所有権を持つことを登記簿に反映させる手続きです。この手続きが終わっていないと、相続人……たとえば、兄弟間で話がまとまっていない状態だと、登記も出来ません。
また、売却活動を行って買主が現れても、不動産を誰が相続したのか決めかねている状態では、売買契約ができません。結果的に、買主を逃してしまいます。登記は法務局で行いますが、正式な名称は若干異なります。登記官には「相続を原因とする所有権の移転登記」をしたい旨を伝えてください。
登記の専門家である司法書士に相談するほうが、遺産分割協議書のような相続に関する書面も一緒に作ってくれるので安心です。個別の相続事情によって必要書類が異なります。事前に法務局に問い合わせをして必要書類を揃えておくと話が早いかもしれません
実家の売却手順2:売却したい物件を一括査定に出す
相続した実家の売却は、プロの不動産業者に売却実務を依頼するのが普通です。ただし、近所の不動産業者を個別に訪ねて歩くのは非効率。また、自宅を売却する金額にも悪い影響が出るので、複数の不動産業者にまとめて査定依頼を出せる一括査定サイトを活用するのが一般的です。
実家の売却には不動産一括査定サイトの利用がおすすめ
ネット上の不動産一括査定サイトから売却したい実家の基本的な情報を入力すると、数日以内に複数の不動産業者から「市場でどれくらいの額で売れそうか」の査定額を受け取ることができます。
それぞれの査定額を比較してみてください。一戸建て、マンションに限らず家屋の状態にも左右されますが、目安となる売却金額はわかるでしょう。いかに信用できる不動産会社を選ぶか。この不動産会社選びが一番大事かもしれません。
信頼できて全国の不動産会社が登録してあるおすすめの不動産一括査定サイトは2つあります。1つは、LIFULL HOME’Sが運営しているHOME’Sです。こちらは約2,800社の不動産会社が登録しておりどんな会社なのか説明も具体的です。
もう1つが、すまいValueです。大手不動産6社からの査定を一括で申し込めます。もちろん査定は無料です。
実家の売却手順3:仲介業者と実家売却のための仲介契約を締結
査定額を提示してきた複数の業者の中から、相性が良く有利に売却を進めてくれそうな業者を1社選び、売却実務を委任する仲介契約(媒介契約ともいいます)を締結します。
この時、上述した相続登記が済んでいないとスムーズに契約できなかったり、ケースによっては仲介を断られたりすることもあります。ご注意ください。
実家の売却手順4:売り出し開始
査定額を元に、実際に実家を売却する金額(広告に実際に載せる金額)を決定したら、いよいよ販売開始。広告の作成を行い、そのエリアで家を買いたいと思っている方に実家物件のアピールを行います。
売却できなければ不動産屋の利益もないため、チラシの作成やフリーペーパーへの記載など広告の実務は全て不動産業者があなたの代わりに行ってくれます。
実家の売却手順5:購入希望者の内見案内
広告によって潜在顧客にアピールすると、随時希望者から内見希望の連絡があることも。これを受け付け、希望日時を調整して物件の案内を行います。この実務も基本的には全て不動産業者が代わって行いますが、オーナー(あなたや親)が希望すれば内見に立ち会うことも可能です。
ただし、物件を良く見せたり、良い点を上手に説明したりするにはコツがあるので、不動産屋に任せたほうが安心かもしれません。
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実家の売却手順6:条件交渉
内見希望の方が物件を気に入ってくれたら、ほとんどのケースでそこから費用面の条件交渉が入ります。若干の値下げ要求は必ずあると思っておいたほうが良いでしょう。
それを踏まえて、売却価格設定の際に幾分金額を上乗せしておいたり、若干の値下げを飲む代わりにその場で契約の承諾を取ったりします。ただし、周辺の似た様な物件と比べて見劣りするような値段ではいけないので、その点は注意です。
相手の要求を上手に転がしながらこちらにも有利な条件を飲ませる駆け引きができれば、有利な自宅売却も可能でしょう。
「ここが古いから直してあったら買う」などリフォームの要求が入ることもありますが、実家売却の場合は値段を下げて購入者に直してもらうことが多いです。
実家の売却手順7:売買契約
購入希望者との条件交渉がまとまり双方が売買取引に納得したら、売り手であるあなたと買い手である購入希望者との間で対象物件の売買契約を締結します。
不動産の取り引きは、多くの法的トラブルが起きやすい分野であるため、契約の内容には精密な工夫が求められます。売り手となるオーナーさんは法律には明るくないことがほとんどですが、契約書の準備は仲介を依頼した不動産業者が担当してくれるので大丈夫です。
契約書にはきちんと目を通すこと
ただし、契約の当時者はあくまであなたと購入者であって、契約から生じる責任はあなたにあります。したがって、用意された契約書の内容は一応全て読み込み、各条項で意味の分からないところがあったら担当者に質問し、納得できる回答を貰うようにしてください。多くのケースでは、この契約締結の場面で売買代金の幾らかがあなたに渡されます。
実家の売却手順8:引き渡しと登記
契約の締結は契約書に署名押印するだけで済みますが、取り引き対象は不動産ですから、その物件を実際に相手に引き渡さなければなりません。引き渡しとは、その家なりマンションなりを購入者が自由に使うために必要な一切の物品を引き渡すものです。
具体的な引き渡しについて
家の鍵や土地にある倉庫のカギ、マンションの防犯カメラなど付帯設備の操作に必要なリモコンなど、購入者がその物件に住み始めた後に必要になる物を全て相手に交付します。この引き渡しに先立ち、多くのケースでは売買代金を分割払いで支払うことになるので、この引き渡しの場面で売買代金の残額を受領します。
同日、不動産業者と提携している司法書士が登記手続きしてくれます。売り手であるあなたから買い手に所有権を移転させる登記を行って、取り引きは終了です。
実家の売却手順9:不動産業者に手数料を支払う
これまで実家の売却の実務に奔走してくれた不動産業者には対価を支払わなければなりません。上述した不動産業者との仲介契約(媒介契約)に従って、所定の手数料を不動産業者に支払います。支払期日や支払方法も当該契約に定めてあるので、それに従った支払いです。
手数料の上限は法律で決まっている
手数料は、基本的に物件の売却金額が高くなるほどに手数料額も高くなる仕組みになっています。ただし、不当に高額の要求がされることがないように、法律で手数料の上限額が決まっているので、それ以上の請求はされることはありません。上限が決まっているだけですので、その範囲で値下げの交渉も可能ではありますが、業者のやる気をそいでしまうので値下げ交渉はお薦めしません。また、もし仲介に失敗し買い手が付かなかった場合は手数料の支払いは不要です。
番外編:もしも実家の売却が難しいのなら
物件の状態によっては、仲介による買取が難しいケースもあります。そのときは、買取も検討してみてください。買取を検討するのであれば、買取博士のように不動産の買取を専門に扱っているサイトがおすすめです。
まとめ:実家売却には信頼できる不動産会社を選ぼう
実家売却:相続登記だけはお早めに
今回は実家を売却処分する手順について以下の内容を紹介しました。
売却の実務はほとんどプロの業者がやってくれるので手間を取られることはありませんが、前提となる相続登記だけはできるだけ早く済ませておくと良いです。この相続登記が終わっていないと、不動産業者も売主が誰か確定できないと考え、売却活動を行ってくれないこともあります。現れた買主にも迷惑がかかるので、相続登記には要注意。
まずは、相続人間の話し合いをまとめること。そして、実家を売却する権利を誰に相続させるのかを確定させて、登記によって示すことが重要です。後は値下げ要求にどこまで応じるのかを事前に決めておくと良いでしょう。売却する実家の引き渡しに関しても、実務は全て不動産業者が行います。あなたは購入者に引き渡す物品に不足が出ないように対象物を集めておくようにしてくださいね。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧