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マンションを売却する際、いくらで売り出すかという販売価格は、買主側で決めなければなりません。その際に参考になるのが不動産業者に依頼して算出してもらう査定価格です。しかし、あえて売れない価格の高値査定を提示する悪徳な不動産業者もいます。彼らから提示され高値査定を鵜呑みにすると、マンションの買い手はつきにくくなってしまうでしょう。
この記事では高値査定されたマンションをそのまま販売価格にしても売れない理由、業者があえて高値査定をする理由、それぞれへの対策を解説します。ぜひ、悪い不動産業者に引っかからないようにするための参考としてください。
マンション高値査定の罠:査定価格は売却保証価格ではない
マンションの査定価格が不動産業者によって異なるのは、それぞれの不動産業者が独自に査定基準を設けているからです。そして、査定価格は「これくらいで売れるでしょう」という予想価格に過ぎず、査定価格自体には何の保証もありません。仮に大幅な値下げをしないと売れなかったとしても不動産業者が補填をしてくれることもないのです。
高値査定をする不動産業者にかぎらず、マンションの査定価格は1つの目安に過ぎません。
悪徳不動産業者がマンションの高値査定をする理由
不動産業者の中には、本来のマンション査定額よりもはるかに高値査定をする不動産業者もいます。マンションの売主にはなるべく高く売りたい気持ちがあるので、高値査定を提示した不動産業者ほど「良い業者」と思ってしまうかも知れません。しかし、あえて高値査定を出す不動産業者には狙いがあります。その狙いに引っかかってしまうと、あなた自身がそうをする羽目になるでしょう。彼らの狙いを知るためには、マンション売買の媒介契約について知る必要があります。
騙されないために知る『マンション売買の媒介契約』
マンション売買にあたって不動産会社と売主が結ぶ契約を媒介契約と言います。悪徳な不動産業者が売れるはずのない高値査定を提示するのは、この媒介契約を結ぶためです。マンションの売主に「この不動産業者と契約すれば高く売れる」と思わせるために高値査定を提示して、媒介契約を得ようとします。
さて、媒介契約には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、マンションの売り主はこの中から1つを選ばなければなりません。悪徳業者はいずれかの専任媒介契約を勧めてくるでしょう。専任媒介契約を結ばせて、売却時の仲介手数料の確保を狙っているからです。専任媒介契約を結んでしまえば他の不動産業者を通じてマンションを売れなくなってしまいますが……高値査定をしてくれた不動産業者が他よりも高く売ってくれそうに見えてしまうと、売主は専任媒介契約を結んでしまいます。つまり、高値査定は専任媒介契約を得るためのエサです。
専任媒介契約は販売する不動産会社を1社に絞るため、売主としても警戒しがちです。そのため、昨今はまず一般媒介契約を締結して売主との関係を作る悪徳不動産業者も現れました。一般媒介契約を結べば「内覧」「販売状況報告」「価格のアドバイス」などで売主との接点が生まれるでしょう。
接点が生まれればビジネスチャンスは増えるのですが、その接点を得る手法が高値査定ということになります。つまりなかなか売れないような金額で査定をし、売主の興味を引き、媒介契約を締結、その後は打ち合わせを重ねながら売れる金額まで金額を下げてマンションを売り、仲介料を得るのです。これは過度に売主に期待をさせ、高額で販売している期間の時間をロスし、本来力のある誠実な不動産会社との接点を減らすのでデメリットしかありません。高値査定をもらったときはより警戒するスタンスが重要です。
マンションの高値査定問題と不動産業者の社員評価制度との関わり
不動産業者において、媒介契約を結ぶ役割を担うのは営業担当です。業界・業種に限らず営業職には必ずといってよいほど目標売上という数値目標が設定されていて、その達成具合によって社内評価されます。
不動産業者の中には、売上金額ではなく媒介契約を結んだ数を評価項目の1つに設定しているところがあります。これもあえて高値の査定価格が提示される要因となっています。媒介契約さえ結べれば社内で評価される、そして査定価格には何の保証もする必要がないことを利用して、高値の査定価格を出す営業担当がいるわけです。
高値査定の金額で売れなくても結局は相場で売れる?
たとえ悪徳不動産業者の高値査定を信じてしまい媒介契約を結んでも、もしかしたら本当に高値査定の金額で売れるかも。売れなかったとしても最終的に相場の価格で売れるのなら損はしない。そう考える方もいるかもしれません。しかし、そうは上手くいかないことが多いのです。
なぜなら、値下げしたマンションは買主側にもチェックされているからです。「あのマンションは一度下がったのならまだ一度下がるだろう」と思われてしまいます。「もう少し待てば、また値下げされるだろう」というマンションを急いで買おうとする人は少ないです。そのため、本来だったら相場の価格で買い手がついたマンションも、相場以下の値段でなければ売れなくなってしまいます。
最初から適性価格で売りに出していればスムーズに売れたマンションも、高値査定を鵜呑みにしてしまうと適正価格で売れなくなってしまいます。そうならないためには信頼できる不動産業者選びと、自分でも相場を知ることが重要です。
悪徳な不動産業者に引っかからないための対策
信頼できる不動産会社が協賛する不動産査定サイトを選ぶ
まずは、おすすめのの不動産一括査定サイトから紹介します。すまいバリューです。すまいバリューは日本を代表するような不動産業者6社が協賛する一括査定サイト。業界の規範となるべき会社だけが集まっていて、信頼性は非常に高いです。
続いて、買取を選ぶときのおすすめが買取博士です。買取博士は首都圏のみですが、仲介手数料なしで自社買取を行っています。買取での査定額は実際に自社で購入する金額ですので、査定金額の信頼性は最も高いと言えるでしょう。
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悪意のある高値査定を避けるために、自分でマンション相場を調べる
信頼できる不動産業者かどうかをチェックするポイントの1つは、自分で相場を知ることです。自分で相場が分かれば、高値査定をしてくる業者を除外できます。相場相応の査定価格を提示する不動産業者の全てを信頼できるわけではないですが、少なくともどこが悪意のある高値査定をする不動産業者なのかは判明するでしょう。
さて、問題は相場の調べ方です。この記事では自分で相場を調べる方法を2つご紹介します。
①:レインズマーケットインフォメーション:実際の売却事例が分かる
非常に更新頻度が高いので、常に最新の売却事例をチェックできます。レインズマーケットインフォメーションでは、地域、沿線、最寄り駅、駅からの距離、築年数、間取り、土地面積などの条件で絞り込んで、売却事例が検索できます。絞り込みで自宅の条件と近いものを表示させれば、大体の相場がつかめます。また、レインズの特徴は実際にいくらで買い手が見つかったかを表す「売却価格」が分かること。実際の売値が分かるので参考にしやすいです。
②:Home’s:マンションの売り出し価格のチェックに便利
Home’sは売却事例が分かるサイトではなく、実際に今売りに出されている物件を紹介するサイトです。そのため、基本的には家の購入を考えている人向けのサイトにはなりますが、売り出し価格の相場を把握するのには有効です。
物件には売り出し価格と売却価格があります。売り出し価格とは、言い換えれば売主側の希望価格です。物件の購入には基本的に価格交渉がありますし、希望価格で買い手が見つからなければ価格を下げて再度売り出すといったことが必要になりますので、売り出し価格のまま売却に至るケースは多くありません。一方で売却価格は実際にいくらで売れたかを示す金額です。レインズマーケットインフォメーションは、売却価格を知るのに便利ですが、いくらで売り出せばよいのかの相場を知る際にはHome’sが便利です。
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損をしないために、マンションの高値査定に注意!
この記事では以下の内容を紹介しました。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧