マンション購入前に知りたい住宅ローン控除の基礎知識

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書類を整理する営業マン

目次

マンション購入を検討していると必ず耳にするのが「住宅ローン控除」というワード。とくに初めて住宅購入検討される方には馴染みも無く、調べてもよくわからない方も多いでしょう。本記事ではローン控除制度の概要について、また盲点となっている物件の適用条件についても詳しく解説していきます。

住宅ローン控除を受けた際のメリット

ポイントを説明する女性

住宅ローン控除とは、住宅ローン利用で住宅を取得した際に、各年の年末ローン残高の1%が10年間所得税から控除される制度です。ポイントは以下のとおりです。

  • 購入や新築だけでなく、リフォームにも適用可能です
  • 取得時の消費税が10%だった場合は従来の10年→13年に期間延長される特例あり

国土交通省HP「住宅ローン減税」

受託ローン控除額の計算方法

一般的な住宅の場合、控除対象となる住宅ローン残高等の最高額は4,000万円になりますので、控除額の上限はその1%、つまり年間40万円になります。

  • 「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」を取得する場合は、控除対象の最高額は5,000万円まで引き上げられ、控除額上限も年間50万円になります。こちらは不動産業者に確認可能です
  • また、消費税非課税(売主が個人の中古住宅等)の住宅を取得した際は、控除対象の最高額が2,000万円(認定長期優良住宅等の場合は3,000万円)、控除額上限は年間20万円(30万円)になります

住宅ローン控除を受けるための条件

住宅 カップル

①:住宅を取得後6カ月以内に入居し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいること

マイホームとしての購入のみに住宅ローン控除は適用されます。投資用マンションなどには、当然適用外です。

また、居住の年の前2年、後3年の計6年間に、それまで住んでいた住宅の売却等により「3,000万円特別控除」や「特定居住用財産の買換え特例」などの適用を受けていないことが条件となります。買い替えを検討中の方は、現住居の売却に際して大きな利益が出ないかどうかを事前に確認しておきましょう。

②住宅の床面積(登記簿面積)が50平米以上

一般的に戸建てなどであれば、床面積50平米のものは非常に少ないので心配はありません。ただし、マンションの場合は要注意です。

また、募集図面などに記載されている面積は壁芯面積であることが多いので、事前に不動産業者に登記簿面積を確認しておきましょう。一般的に壁芯面積は、登記簿面積よりも大きくなります。

なお、この条件は一定条件を満たす場合「40平米以上」に改正予定のようです。

③中古住宅の場合は以下3つのいずれかを満たすもの

  1. マンションなど耐火建築物は築25年以内、木造などは築20年以内
  2. 一定の耐震基準をみたすことが建築士等によって証明された住宅。
  3. 購入後に耐震改修工事を行い、建築士等によって一定の耐震基準に適合すると証明された住宅

築年数が25年超のマンションでも「耐震基準適合証明書」が取得できる建物であれば、控除対象となります。1981年6月以降に建築確認申請をしている(新築年月とは違うので注意)建物であれば、現行の耐震基準を満たしているので心配はありません。

一方、それ以前の建物だと基本的に耐震改修工事をしていなければ適用されないことがほとんどです。また「耐震基準適合証明書」の発行自体も手数料もかかります。この点にも注意が必要です。

④住宅ローンの返済期間が10年以上であること

住宅ローンの返済期間が短いと、住宅ローン控除の対象からは外れてしまいます。長期的に住宅ローンを払い続ける人のための制度だからです。

⑤社内融資等の場合は利率が1%以上のもの

同じような理由で社内融資などの場合は、利率が1%以上のものだけが住宅ローン控除の対象となります。

⑥控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること

また、所得が多い人は住宅ローン控除の対象にはなりません。年収が3,000万円以下であることが、住宅ローン控除を受けられる条件です。詳しくは下の国税庁のHPに記載されていますので、ご覧ください。

国税庁HP「住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

国税庁HP「中古住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)

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住宅ローンの控除の手続き方法

税金

控除を受けるためには、入居した翌年の3月15日までに税務署に確定申告をする必要があります。サラリーマンなど、給与以外に収入が無い方は1年目に確定申告をすれば翌年以降は勤務先の年末調整のみで控除を受けることができます。

住宅ローン控除によってはじめて確定申告をする方も多いので、心配な方は事前に管轄税務署へ相談しておきましょう。

国税庁HP「管轄税務署を調べる」

国税庁HP「住宅ローン控除を受ける方へ」

住宅ローン控除を受ける際の注意点

不動産の説明を聞く女性

契約書類などはしっかりと保存

人生でおそらく一番高い買い物となる住宅購入なので前述のとおり住宅ローン控除だけでなく、現住居売却時の譲渡所得税なども大事な要素です。契約書類や支払ったお金のエビデンスとなる領収書などは、取引完了後もしっかりと保存しておくようにしましょう。

長期間居住する方がほとんどなので、自身が亡くなった後に家族が家を売却しようとしても書類を紛失していて損をしてしまう等は非常によく聞く話です。

ここまでの内容で住宅ローン控除の概要・メリットは理解できたかと思います。概要やメリットをある程度理解できたら「控除要件を満たす物件のほうが得をするのでそれに絞って探そう!」と考える方が大半でしょう。しかし、私の経験上、住宅ローン控除要件を満たす物件ばかり探すのは、おすすめしません。

住宅ローン控除ありきの家探しはおすすめしない

たとえば、東京23区エリアだと住宅ローン控除適用外の古い物件も数多く取引されています。これらの古い物件は、控除額以上の金額差をつけて販売していることが多く、総合的に考えると「安い買い物」になるケースも少なくありません。専有面積で適用外となる30平米~40平米程のコンパクトマンションも同様です。

また、こういった古い物件・狭い物件は、購入を希望するライバルが少ないです。ライバルが少ない物件は、値下がりも期待できるでしょう。

監修者から

不動産会社(消費税課税業者)が売主の物件を購入する場合と個人が売主の物件を購入する場合で住宅ローン減税の恩恵が大きく異なります。4,000万円以上のローンをくんで物件を購入する場合、減税総額で250万円もの差が出ます。売主が不動産会社かどうかチェックする事は非常に重要なポイントです。

まとめ:住宅ローン控除にとらわれすぎない

住宅

この記事では以下の内容を紹介しました。

もちろん、住宅ローン控除にはメリットがあります。適用されるのであれば必ずつかうべきでしょう。しかし、適用外の物件にもメリットがあることを念頭に置いて物件探しをしてみてください。そうすれば、あなたの物件選びの選択肢は必ず広がります。

監修者:鈴木 良紀

監修 鈴木

経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧