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今や日本全体の問題となった「空き家」。その空き家を売却したときにも税金はかかります。その計算方法についての解説です。また、空き家問題を解消するために、空き家を売却した場合には特別な控除を受けられる場合があります。空き家問題を売買にかかる税金の面から見てみましょう。
不動産のキーワード「空き家」
空き家問題の対策として
近年の不動産に関するキーワードのひとつに「空き家」があります。使わなくなった空き家をどのように活用するか、誰が面倒をみるのか。人口が減少する日本では切実な問題です。
また、この問題は誰もが当事者になりうる問題でもあります。両親が住んでいた実家が空き家になる。空き家を相続する。そんな可能性は多くの人にあるのです。ここでは、空き家を売却したときの税金についてみていきます。
空き家を売却しても税金がかかる
譲渡所得と確定申告
譲渡所得、確定申告というとサラリーマンにはなじみの薄い言葉です。ただし、空き家を売却すると、こうした制度とも向き合う必要があります。適切に納税をするためにぜひ勉強しましょう。
空き家を売って売却益が出ると所得税がかかる
空き家を売却した場合でもいつも税金がかかる訳ではありません。売却益が出た場合、その売却益に対して税金がかかります。これを譲渡所得税といいます。例えば、新築時に6,000万円で購入した一戸建てを15年後に4,900万円で売却したとしても税金はかかりません。建物部分の価値は年々下がっていきます。
ただし、地価が高騰している東京都心部では建物部分よりも土地部分の占める価格が大きいため、値上がりすることがあります。この他、東京以外でも地価の高いエリアでは売却益が出る可能性があるのです。また、ブランド力、人気のあるエリアも値下がりしにくいため、売却時期によっては税金がかかることがあります。
空き家売却時の所有期間によって税率が変わる
もしも売却益が出た場合は、その所有期間によって税率が変わってきます。判断基準は、譲渡した年の1月1日時点で5年を超えるかどうかです。5年を超えていれば「長期譲渡所得」、5年以下は「短期譲渡所得」になります。
長期譲渡所得の税率は20.32%、短期譲渡所得は39.63%(いずれも所得税と住民税を合算した税率)です。税率がおよそ2倍違います。これは短期転売でもうけようとする、投機的な取引の抑制のためといわれています。
ですが、急な転勤などで購入5年以内に転売する人などは要注意です。わずか数か月で納める税金が大きく変わることもあります。
売却時の課税譲渡所得
課税譲渡所得の基本的な計算方法
課税譲渡所得は以下のような算式になります。
・課税譲渡所得=①譲渡価額-②譲渡費用-③取得費
課税譲渡所得はシンプルな計算方法です。譲渡価額とは売却した価格、譲渡費用は売却するためにかかった費用になります。取得費は特に注意が必要です。この点については取得費の項目で詳細に解説します。
①譲渡価額とは
譲渡価額はその空き家が売れた価格です。通常は売買契約書記載の金額になります。売買の相手方もいますし、何より直近で行われる売買なので客観性は高いものです。譲渡価額についてはこうした資料により判定し、大きな食い違いはないといえます。
②譲渡費用とは
譲渡費用は売買のために必要となった費用をいいます。印紙代、測量費用、仲介手数料等が代表例です。空き家の場合、すぐに利用することが可能なのか、利用するためにはどれくらいの費用がかかるのかを調査するインスペクションという診断もあります。こうした費用も譲渡費用として計上可能です。
③算定が難しい取得費
取得費の査定方法はいくつかの方法があります。査定方法は法律や規則では特に定めがありません。客観的な方法で説得力があればよい、ということになります。現在よく行われている方法は以下の通りです。
- 売買契約書からの抜粋
- 消費税から推測もできる
- 標準単価から推測
- 売却時の固定資産税評価額から推測
取得費の算出について
売買契約書は必ず保管しよう
売買契約書は最も重要な書類です。購入時の契約書があるか必ず確認しましょう。売買契約書に土地の部分の価格、建物部分の価格が記載されていれば証拠能力の高い数字になります。両親の財産を相続した場合も購入当時の契約書があるか確認すべきです。
相続の場合、取得時点はその相続財産を購入した時点になります。例えば、平成27年1月に相続でその空き家を手に入れたとしても、平成10年3月に父親が購入していれば、平成10年3月が購入時点となります。売買の金額も同様に平成10年3月の購入時の代金になります。
消費税から推測もできる
マンションの場合、土地建物割合の記載がない契約書もあります。その場合でも消費税額が明示されていれば、消費税額から建物購入代金を推測できます。なぜなら、消費税は土地には課税されず、建物のみに課税されるからです。
標準単価から推測も可能
「建築統計年報(国土交通省)」などには、標準的な建築単価が記載されています。これを用いて建物価格を推定することも可能です。
例えば、平成11年の単価は1㎡あたり19万7,900円となります。専有面積が70㎡のマンションでは、19万7,900円×70㎡で13,853,000円です。建築単価は民間のシンクタンクから建設会社まで多くの機関が発表しています。この場合は、公的機関の発表する数値を採用することがおすすめです。
売却時の固定資産税評価額から推測
毎年、4月になると固定資産税の納税通知書が送られてきます。税額だけ見て引き出しにしまう人も多いものです。ですが、この通知書には土地と建物の評価額も掲載されています。
この固定資産税評価額は課税のために実勢価格よりも割安な評価となっています。この土地と建物の割合を契約金額に乗じることによって建物部分の金額を推定することが可能です。
ただし、この方法はやや複雑ですし、消費税の取り扱いなどが難しい面もあります。もしこの方法で購入代金を査定する場合は、税理士などの専門家に相談すべきです。
概算取得費は最後の手段
契約書もない、消費税からも推定できないという場合、最後の手段として概算取得費を使用することもできます。これは売却価格の5%を取得費とするものです。
この概算取得費を使うと、売却価格の95%は売却益ということになってしまいます。もちろん、これ以外にも様々な経費を控除することは可能です。ただ、売却益が多く出る可能性があるため、本当に手段がない場合の最後の一手として残しておきましょう。
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空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
空き家を売却すると特別控除の適用も
空き家を売却して所得があった場合、一定の場合には所得からの特別控除があります。具体的には、以下のようなものです。
- (1) 相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていたものであること
- (2) 相続の開始の直前において当該被相続人以外に居住をしていた者がいなかったものであること
- (3) 昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建築物を除く)であること
特別控除はすべての取引に適用されるわけではない
相続に係る空き家の売却なのですべての空き家の売却について適用されるわけではありません。例えば、昭和56年6月以降に建てられた一戸建てやほとんどのマンションは対象外です。ですが、空き家を少しでも円滑に処分したいという国の姿勢の現れは評価すべきです。
空き家問題は難しい課題
売却は空き家活用の第一歩
この記事では以下の内容を紹介しました。
空き家問題は日本全体の課題となっていて、すぐに解決することは難しい問題です。売却できない空き家も多い中で、空き家の特別控除を使うことができるのは幸運かもしれません。もし特別控除に該当するなら積極的に使ってみましょう。
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