不動産売却:「3,000万円特別控除の特例」のまとめ

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目次

自宅を売却する際、とくに売買差益(譲渡所得)がプラスになる場合、「税金が多額になるのでは?」と心配されたことはありませんか?

一般的な住宅の場合、売買差益のプラスが大きくなっても「3,000万円特別控除の特例」の特例により譲渡所得税がゼロになるケースが多いです。つまり、知らないと大きく損をする可能性もあるということ。この記事では「3,000万円特別控除の特例」の概要や利用条件、利用メリット、申請方法、相続時の特別控除を解説していきます。

「3,000万円特別控除の特例」の概要

アドバイス

自宅(居住用財産)を売却した場合、条件を満たせば譲渡所得(税)が控除される特例があります。以下より、その概要を解説します。

「3,000万円特別控除の特例」とは?

自宅を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。これを「3,000万円特別控除の特例」といいます。

「3,000万円特別控除の特例」を利用できる条件

この特例を利用できる条件は下記の6項目を満足する必要があります。

条件内容
条件1自宅の建物を売却するか、建物とともに敷地や借地権を売却すること。過去に居住していた自宅の場合、退去日から3年経過日の年の12月31日までに売却すること。
条件2自宅を売却した年の前年と前々年に、この特例もしくは「自宅の譲渡損失に係る損益通算」や「繰越控除の特例」の採用がされていないこと。
条件3自宅を売却した年と前年と前々年に、「自宅の買換え」や「自宅の交換の特例」の採用がされていないこと。
条件4売却した自宅の場合、「収用などの場合の特別控除」など他の特例の採用がされていないこと。
条件5災害により損壊した自宅の場合、退去日から3年経過日の年の12月31日までに売却すること。
条件6売主と買主が、特別な関係(親子、夫婦など)でないこと。

詳細は国税庁のサイトでご確認ください。

「3,000万円特別控除の特例」を利用するメリット

「3,000万円特別控除の特例」を利用するメリットは、納税額が安くなることです。というのも、自宅を売却して経費などを差し引いた後にプラス(譲渡所得)が出たとしても、プラス分から最大3,000万円を差し引くことができます。そのプラス(譲渡所得)分に税金がかかるので、税額が安くなるというわけです。

譲渡所得の計算方法

譲渡所得は下記の計算式により算出します。

譲渡所得 =(売却価格-売却時の諸費用)―(購入時の価格+購入時の諸費用-減価償却費用)

売却価格   :自宅の建物や土地の売却価格となります。

売却時の諸費用:不動産会社への仲介手数料や移転登記・抵当権抹消登記費用などの総和となります。

購入時の価格 :自宅購入時の価格となります。

購入時の諸費用:自宅購入時の不動産会社への仲介手数料や移転登記・抵当権設定費用などの総和となります。

減価償却費用 :自宅の建物部分の経年による劣化損傷を見込んだ構造別の償却費用となります。購入時の価格-減価償却費=簿価となります。

譲渡所得税率

譲渡所得税は、譲渡所得に税率を乗じて算出します。その場合、自宅の所有期間により税率が変わるので注意してください。売却した年の1月1日時点において所有期間が5年を超える自宅の場合、長期保有となり所得税率は15%(住民税:5%)です。

一方、所有期間が5年以下の自宅の場合は短期保有となり、所得税率は30%(住民税:9%)です。さらに復興特別所得税が長期保有の場合に0.315%、短期保有の場合に0.630%の税率が適用されます。これらをまとめると下表の通りです。

税の種類長期保有(5年超)短期保有(5年以下)
所得税率15%30%
復興特別所得税率0.315%
(所得税額×2.1%)
0.630%
(所得税額×2.1%)
住民税率5%9%
20.315%39.630%

次項より事例を見ていきましょう。今回のシミュレーションは以下の通りです。

  • 自宅を8,000万円で譲渡(売却)
  • 自宅の取得費が4,500万円
  • 売却時の諸費用が500万円
  • 譲渡所得が3,000万円

長期保有の税額

長期保有(所有期間:5年超)の場合の譲渡所得税、復興特別所得税、住民税は、以下の通りです。

  譲渡所得税   = 3,000万円 × 15%  = 450万円

  復興特別所得税 = 3,000万円 × 0.315% = 9.45万円

   (もしくは、 =  450万円 × 2.1%  = 9.45万円)

  住民税     = 3,000万円 × 5%  = 150万円

  合計      = 609.45万円

短期保有の税額

一方、短期保有(所有期間:5年以下)の場合の譲渡所得税、復興特別所得税、住民税は以下の通りです。

  譲渡所得税   = 3,000万円 × 30%  = 900万円

  復興特別所得税 = 3,000万円 × 0.630% = 18.9万円

   (もしくは  =  900万円 × 2.1%  = 18.9万円)

  住民税     = 3,000万円 × 9%  = 270万円

  合計      = 1,188.9万円

「3,000万円特別控除の特例」を利用すると?

この特例を利用すると、一般的な住宅の場合は譲渡所得がゼロになります。そのため、納税額もゼロです。上述した事例を基に、「3,000万円特別控除の特例」を利用する場合の譲渡所得を算出します。

  譲渡所得 = 8,000万円 - 500万円 - 4,500万円 - 3,000万円 = 0

このように、譲渡所得はゼロなので、譲渡所得税、復興特別所得税、住民税はゼロとなります。譲渡所得が3,000万円を超えるケースは少ないため、多くのケースで譲渡所得(税)はゼロになるでしょう。

「3,000万円特別控除の特例」の申請方法

住宅

この特例を受ける場合、確定申告が必要となります。手続き方法は下記の通りです。

確定申告に必要な書類を準備

確定申告に必要な添付書類を下表にまとめます。

必要書類内   容
住民票居住している証拠書類
譲渡所得の内訳書確定申告書付表兼計算明細書(土地・建物用)
戸籍の附票の写し
消除された戸籍の附票の写し
その他これらに類する書類
自宅の売買契約日の前日において、自宅の売手の住民票に記載されていた住所と、自宅の所在地とが異なる場合
→ 自宅の売手が居住していたことを明確にする書類

確定申告

譲渡所得税は損益通算ができる総合課税ではなく分離課税に相当しますので、給与所得や事業所得とは分けて確定申告する必要があります。自宅を売却した年の翌年2月15日から3月15日までの期間に、確定申告を行います。

相続時においても特別控除の適用が可能

不動産スタッフ

相続や遺贈により被相続人の自宅を取得した場合、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの期間に売却し利用条件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。これを「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」と言います。この特例と「3,000万円特別控除の特例」とは関係ありません。

監修者から

相続で住宅を取得して(実家)その住宅に居住しない場合は先の表に記載のある「条件1」の類推適用的に「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること」と期間が定められています。

実家を相続により取得した場合は、この期間に注意して長く空家にしないようにしてください。実家にそのまま住む場合は、居住用の不動産なので住まなくなるまでこの3年を意識する必要はありません。

相続が絡むときの記事はコチラ➡https://fudousan.click/3yearsmerit/

まとめ:3,000万円特別控除の特例を上手に利用したい

住宅

「3,000万円特別控除の特例」について、概要や利用条件、利用メリット、申請方法、相続時の特別控除について以下を解説しました。

この特例を利用できるどうかは税金が発生するかどうかに大きく影響するので、自宅を売却する前に必ず知っておきましょう。売却時の記事はコチラもご参照ください。

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監修者:鈴木 良紀

監修 鈴木

経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧