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中古マンションを購入し、リノベーションをしたいと思っている方が最近増えています。私も不動産業者の社長だった時、ショールームにマンション購入希望者が殺到していたリフォーム業者から「仲介をお願いできないか」と業務提携を持ち掛けられたことがあります。そこで今回は中古マンション購入者の方にリノベーションすることのメリットとデメリットをお話します。
選択肢が広がる中古マンションのリノベーション
リノベーションが大流行中
中古マンションを購入してリフォームすることを「リノベーション」と呼ぶようになって10年前後でしょうか?以前住友不動産の「新築そっくりさん」がTVCMで流れた時は単に「リフォーム」だったのが、いつの間にか「リノベーション」が浸透していきました。
- 「中古マンションをリノベーションすれば新築気分も味わえる」
- 「新築マンションが欲しいエリアにないので中古をリノベーションしたい」
- 「売却するときもリノベーションしておけば高く売れるのでは」
中古マンションのリノベーション相談を多く受けています。今回は中古マンションを購入してリノベーションする場合におけるメリットとデメリットを紹介しながらお話をさせて頂きます。
中古マンションのリノベーションについて
「リノベーション」と「リフォーム」の違い
私もいつの間にか浸透した「リノベーション」という用語を知りたくなってWikipediaを見てみました。このページに「メリット」「デメリット」までが今日現在しっかり描かれています。そこでWikipediaの文章から引用すると以下のような区別になっています。
リフォームは「老朽化した建物を建築当初の性能に戻すこと」を指し、元に戻すための修復の意味合いが強い。古くなったキッチンを新しいものに変えることや、汚れた壁紙を張り替えるなどの小規模な工事は「リフォーム」に分類される。一方リノベーションは、修復だけでなく「用途や機能を変更して性能を向上させたり価値を高めたりする」行為も含むため、より良く作り替えるという目的が含まれている。工事の規模も、間取りの変更を伴うような大規模なものを指すことが多い。(Wikipediaより引用)
すると中古マンション購入者が入居前、最低限行うであろうクロスの貼り換え、キッチンユニットの交換、畳替え(カーペット交換)などは「リフォーム」になるようですね。「リノベーション」は2DKの間取りをカッコいい1LDKに間取り変更し、段差のある古い年代の作りをバリアフリーに変更するようになると「リノベーション」に分類されるようです。
予備知識として「リフォーム」と「リノベーション」の区別は知っておいて損はないでしょう。
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リノベーションにかかる費用はどの程度?
最低限の「リフォーム」でクロス貼り換えや畳替えだけでも業者によりけりとはいえ約50万円程度の費用負担はかかるのが普通ですから、間取り変更やバリアフリーなど、費用(コスト)を掛けようと思えばいくらでも掛けられるのが「リノベーション」です。
業者のHPを引用して比較するのは控えますが、私が不動産業者社長時代、業務提携を考えた業者さんの所に来ていたお客様は500万、600万程度の予算で理想通りのマイホームを描いていました。中古マンションも昭和50年代中旬までの新耐震基準以前の間取りは2DKや3DKが多かったので、間取り変更で2DKを1LDKに、3DKを2LDKに変更するプランは良く見た記憶があります。
「リフォーム」はベースとなるマンションの老朽化部分を「修繕」するレベルですが、「リノベーション」は間取り・床材や水回りなど大規模な変更を伴うため費用もある意味で「青天井」です。まれに1,000万も掛けた話を耳にしますが個人のマイホームでそこまでやるのは芸能人など個性が強く自分のこだわりを経済的にも実現できる限られた需要者に限られると思います。
中古マンションのリノベーションにおけるメリット
Wikipediaにも記述がありますが、不動産屋の目から見た順に纏めてみます。
1. 新築マンションよりも購入費用を抑えられる
リノベーション費用がどの位になるのかにもよりますが、新築マンションの分譲価格を飛び越えるケースはあまりないと思います。逆にリノベーション金額から逆算して購入する中古マンションの価格を逆算して探す需要者がほとんどです。いずれにせよ新築マンションよりも中古マンションをリノベーションする方が購入費用を抑えられます。
2.新築マンションがない場所でも中古なら存在し得る
2017年6月現在、都心三区を中心に需要と建築が進み、新築マンション用地不足が顕在化しています。つまり希望する立地に新築が建つのを待っていても建築されるかわかりません。これに対し、中古マンションは既に人気エリアに建っていたりするので新築と比べて選択肢が広がります。またモデルルームでパースなどイメージ図でしか見えない「青田=建築前の更地」の新築と違い中古マンションは既に建っているので外観や日当たりなどを実際に目で見て確認できるメリットもあります。
3.自分の好み通りに間取りや内装などを選択できる
新築マンションも最近リノベーションとの競合もあり、間取りや内装をお好みにアレンジできるようにサービスを変更しているようですが、如何せん限界があります。その点リノベーションは共用部分に影響を与えない管理規約の範囲内で専有部分を思い通りに作り込むことが可能です。
クロスや床材の材質、色味、また健康素材など、こだわりのある方は徹底的に作り込みます。もちろん見合う費用がかかることは言うまでもないことです。
4.購入時点と比べてリノベーション後は資産価値が増加する
単純に中古マンションに費用を投下してリノベーションしたのだから価値があがるのは当然と誰もが考えるはずです。確かに不動産鑑定の世界でも「資本的支出」といって耐用年数を超過するのが間近の築後40年のビルに一億費用を掛け大がかりなリニューアル工事をした場合、耐用年数を「若返った」分だけ長く見る考え方が評価方法に取り入れられました。
しかし、中古マンションのリノベーションは「専有部分」のみですから、一棟の建物全体が新しくなりません。ゆえに同じ一棟の建物内部での比較では価格的に上位になりますが、他のマンションとも比較される中古マンションの売買市場ではあまり過剰な金額を投下しても価格にそのまま反映されないことも十分留意しなければなりません。
中古マンションのリノベーションにおけるデメリット
1.購入後入居するまでに時間を要する
新築マンションも契約後完成を待つまで時間を要しますが、中古マンションのリノベーションは購入後決済が済み、引き渡し後に時間を要します。綿密な業者を伴った内見で工事個所を打ち合わせし、設計に2~3か月、工事に1~2か月前後の期間を要します。
工事開始を早めるため、売主にお願いして引き渡し前に内見依頼を依頼することもありますが、基本的には引き渡し後所有権移転が済まないと「他人の物件」のままです。すると購入後に工事が完成し入居するまでの間、賃貸住まいであればじっくり腰を落ち着けられますが、買い替えだった場合は「仮住まい」を探す必要とその賃料負担という別の費用(コスト)がかかってしまいます。
2.新耐震基準前の古いマンションは検査が必要な場合もある
耐震設計に関する事項は基本的に一戸建住宅のリノベーションで問題となる事項ですが、中古マンションの場合、1981年の新耐震設計基準以前に建てられたマンションは耐震性が現在の基準を満たしていないため検査を必要とするなど想定外の必要負担を強いられるケースもありえます。
3.管理規約に定められた範囲を超したリノベーションは不可
マンションは一棟の建物にある専有部分を所有権で取得します。バルコニーや戸境壁は共用部分にあたるため変更することはできません。こうした決まりは管理規約にも定められています。例えば玄関ドアはどうか?実はこれ、「共用部分」です。許可なく勝手に玄関ドアを交換することはできません。他にもバルコニーは共用部分ですが、窓のサッシはどうか?これも共用部分にあたるのです。意外だったかもしれませんね。
また、床もフローリング材の材質などが「デシベル」という音の数値で遮音性能が規定されている事が通常になっています。見てくれや好みだけで床材を選ぶことができません。このように何でも好き勝手に思い通りにはできないこともデメリットの一つとして認識すべき事項です。
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4.過剰なリノベーションは売却時にマイナスとなることに注意
メリットの方で少し触れましたが、リノベーションを過剰に施した中古マンションは売却時に高く売れるとは限りませんし、それだけでなく、個性的過ぎると逆に印象を悪くするケースが多いのです。
むかし「いまだハウジング」というバラエティー番組がありましたが、私は不動産鑑定士として番組制作会社まで打ち合わせに行ったことがあります。内容は芸能人が持っている別荘を、いとうまい子さんが現金を持って「買う」「買わない」をジャッジするというシナリオで、最近似ているパターンを的場浩司さんが別番組でやっています。
イメージしてください。マンションではあり得ませんが、小錦さんの別荘は稽古用と同じ位の太い柱がある独特の作りでしたし、他の芸能人もリビングが50畳あるとか、天井高が吹き抜けでチャペル並だとか、凄く個性と個人的な趣味が入っています。
買い主にも好みがある
物件をマンションに戻しますが、仮に1,200万円を掛けてリノベーションした物件があるとします。売主は「1,200万の費用を掛けてリノベーションしました」と金額をアピールする方が多いでしょう。ところが買主にも「自分の好み」があります。購入後同様に自分の好きな内装にリノベーションするかもしれないのです。撤去が難しい造作が付いていたりすれば逆に値引き交渉すらされる危険があります。
このように過剰なリノベーションは将来売却する時に、使った費用の分まで高く売れることはほとんどないこと、奇抜なデザインは値引き交渉の理由とされるなど、売却時に不利となることを知っておかねばなりません。
中古マンションのリノベーション:まとめ
中古マンションリノベーションはメリット・デメリット混在
この記事では以下の内容を紹介しました。
今回は中古マンションのリノベーションについてお話しましたが、マンションはあくまでも一棟の建物にある専有部分を購入するものです。リノベーションが施せる範囲は管理規約でも縛られていますので全てが思い通りになるわけではないことを頭に入れておきましょう。
このようにメリット・デメリットが混在することを良く認識して、過剰なリノベーションは控えた方が売却時を考慮すると無難だと言えます。
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