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マンション売却をする際には不動産業者に仲介を任せることがほとんどです。業者選びは大切ですが、不動産業者は売却を成立させ、仲介手数料を貰うことが営業目的ですので、あなたの思惑や考えと微妙に異なる場合があります。マンション売却にあたって注意しなければならない仲介業者の「本音」のうち特に重要な5つをまとめてみました。
不動産業者は仲介手数料を得るために動く
成約する可能性が高い物件を最優先に動く
マンション売却中の方は特に不動産業者の動きについて、何かカケヒキめいたものを感じた事があるのではないでしょうか。今まで親切丁寧だった業者が、突然高圧的に感じたり」、買主の味方になったのかと思うことはありませんか?
- 最初の三か月は何も言わなかったのに、大幅な値下げを要求してきた
- 一般媒介にすると言ったら全然親身になって動かない
- 購入申し込みが入った途端、『これを逃したらいけません』と言う営業に焦りが見えた
- 一体、売主の味方か買主の味方なのか全然わからなくなった
業者の動きに疑問を持つ声が多く聞かれます。まず大前提として、売買・賃貸も同様に、業者は仲介手数料を得るために動いています。手数料を得られると思えば一生懸命になりますし、得られないと思えば動きません。
そんな業者が売主・買主に明かさない本音について特に重要な5点を取り上げてみました。是非、業者と付き合う際の「知恵」として知っておいて下さい。
マンション売却で知っておきたい不動産業者の本音
1)高値で査定して売主を獲得し専任媒介契約を狙う
仲介業者は自ら「売主」「買主」となる買取り転売業者と違い、中古マンションの「売主」「買主」を見付けてマッチングさせなければ手数料収入が得られません。しかも「買主」は基本的に業者単位でなく、欲しいと思う物件に問い合わせをします。
通常、「買い」は専任媒介契約で一社に物件探しを任せることはありません。しかも内見した物件が気に入らなければ、自社のストック客になってくれるかどうかもわかりません。経費を使って案内しても全部無駄になることも多いのです。つまり、「買い」を中心にすると、不動産業者の経営は安定しません。
従って業者は「売り」を取ろうとします。売却は「専任」「一般」いずれも基本的には3か月間は販売活動を続けられます。「買い」は不安定ですが「売り」を多く受けられたら、そのうちのいくつかは自社で成約できるはずだと業者は考えます。だからこそ「売り」を取るためにあらゆる努力を惜しみません。
一括査定サービスの役割
現在は一括査定サービスが普及したため、大手の売却募集チラシだけが査定を独占できる時代ではなくなりました。中小の業者も無料査定に参加できるわけです。一括査定サイトもいろいろありますが大手も中小企業もバランスよく登録してあるおすすめの不動産一括査定サイトは2つあります。
1つは大手不動産会社6社が運営し、業界で最も知名度がある「すまいValue」。三井のリハウスや住友不動産など、大手不動産会社にまとめて査定が依頼できるサービスです。
2つめはLIFULL HOME’Sが運営しているHOME’Sです。こちらは約2,800社の不動産会社が登録しておりどんな会社なのか説明も具体的です。
ブランドと信用に勝る大手に対抗する手段は何か?
最も簡単なのが、査定依頼が来た時、想定売却価格を遥かに超える高額査定で売主の気を引くことなのです。売主は「高く査定してくれた業者は高く売る自信がある」と思い込んでくれます。自分の希望売却価格より高い価格を提示されれば「最初の3か月はこの業者に任せてみよう」と気分よく専任媒介契約書に署名・押印するのではないでしょうか。
しかも「一般」でなく「専任」で媒介契約を取りに来ます。一社独占の「専任」であれば、運よく買主を自社で見つけられたら「両手」の取引で手数料は2倍になります。高額な査定金額を書いた業者は、まず専任取得を目論んでいるのが本音です。
2)高い価格設定で売却を開始し3ヶ月後に値下げ交渉
高い査定価格で売主から「専任」を貰えたら、多くの業者は3か月の媒介契約中、提示した高額の価格を売り出し価格として「寝かせる」動きを取ります。「寝かせる」とは業界共通用語ではありませんが、高く査定をして「専任」を受けた以上、その金額を後から「実はかなり高めに書きました」とは言えません。そのため、査定価格通りに売り出すしかないのです。これはマンション売却の売主にとって、大きな不利益となって返ってきます。
良心的な業者は極端な高値で受けることを避けます。一旦高値で受けてしまうと、広告宣伝費を投入したところで反響がほとんどないことが目に見えていますし、売主から「何で動いてくれないのか」とクレームを受ける原因ともなります。ゆえに、「高値受け」は大手も行っていることですが、極端すぎる高い希望価格の売主は、媒介契約後になってモメる可能性が高いので、無理してまで受けないようにするはずです。
ブランド力がない不動産会社の動き
一方、大手でもなく知名度がまだ低い業者は、ブランドや信頼性の面でどうしても大手に負けますから、とにかく高額査定で専任を取りに来るのです。私自身、野村不動産の営業マンでしたが、独立したとき、三井、住友、野村などの「ブランド力」を痛感したものです。
ここで「高値受け」できた業者は、当然売主に提示した希望価格で売却活動を始めますが、電話やメールで「ポータルサイトに載せました」「手持ち客に紹介しましたが、興味を示しませんでした」など、活動しているのに反応がないという報告だけをマメにして、売主と値下げ交渉をする下地を作ろうとします。
今は新聞折り込みチラシよりも「スーモ」「アットホーム」などの物件情報サイトへ掲載し、スマホ画面で間取りや周辺環境、内部の360度ビューまで見れる時代です。大手ポータルサイトへ掲載するだけでも、業者は専任で義務付けられている2週間に一度の活動報告で「しっかり活動しています」と言えます。
しかし、本音は売主が今の売り出し価格では売れないと認識させるべく、様々なデータで根拠を構築します。代表的な文言は、以下のようなものです。
- 「ポータルサイトに載せたが反響がない」
- 「内見の申し込みが入らない」
- 「他業者からの『確認』電話が来ない」
このように「高値受け」しても業者は必ず3か月後の値下げ交渉を考えているのです。
3)専任媒介契約でなければ売却活動も二の足を踏む
マンション売却に限らず、土地、戸建なども含めて、業者は売主から「専任媒介契約」を取ろうとします。なぜ、業者は「専任」に拘るのでしょうか?
一番の理由は「両手取引」が成り立てば手数料を売主・買主双方から貰えて「2倍」の手数料を貰えるからです。でも、それだけではありません。「専任」を取っておけば、万が一、「両手」にならなくとも、他社が「客付け」してくれたら最悪でも片手分の手数料を売主から貰えるのです。簡単に言うと、放置しておいてもある日突然、他社から買い付け(=購入申し込み)が入って成約する「チャンス」を保持することになるわけです。
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一般媒介について
では「一般」ではダメなのか?「一般媒介」は他社に重ねて売却依頼が可能ですから、専任とは逆に「ある日突然他決(=他社で決まること)する」リスクがあるのです。「両手」のチャンスは他の「一般」で売却を受けた業者と共通して持つことになるものの、あくまで一社のみがその「チャンス」を手にします。
ここで業者心理として知ってほしいことがあります。「専任」でなく「一般」の場合、広告宣伝費を全力投入したのに、ある日突然「他社で決まりました」という連絡が入って、経費倒れに終わるリスクを抱えて売却活動をしなければなりません。すると業者は「専任」の場合、大手ポータルサイトへの掲載は当然のこと、オープンルーム開催の告知に折り込みチラシを投入したり、近隣マンションへのチラシ投函など、経費をふんだんに使って動きます。
私は「一社専任」よりも「二社一般」をお勧めしていますが、あくまで私の考えであって、「専任」「一般」それぞれ一長一短です。しかし、業者が「専任」でないと積極的に動けない心理は知っておくといいでしょう。
4)指値(価格交渉)が入った時に見える業者の本音
売却活動を行った結果、いよいよ買主から買い付け(=購入申し込み)が入りました。しかし、申し込み金額は売り出し価格よりも低い金額です。これを業界共通用語として「指し値」と呼んでいます。
買主のタイプにもよりますが、近年はほとんどの買主が「価格交渉はできる」と考えているようで、「指し値」をしてくる事は珍しい事ではなく普通のことになりました。売主へ「購入の申し込みが入りました」と報告してくるのは、当然、売却を依頼している不動産業者からです。
この時の業者心理はどうか?当然ですが、業者は「決めよう」と考えます。
特にマンションの売り出し値が若干高めで、買主の指値が想定売却価格とピタリ一致していたならば、業者は決めに行くアクションを取るのが普通です(もっとも、無理な指値だったり、強気に構えられる位の引き合いがあれば対応は違います)。決めるためには売主を説得しなければなりません。業者はこの時のために用意した、あらゆる論理をブツけてきます。もっとも、それが全て「悪い」ことでは決してありませんが、ここで業者の本音がハッキリと現れます。
業者にもよりますが、不動産業者の社員は成約した部分を成績給や歩合給としてボーナス時に支払う形態が多いはずです。私もそうだったのですが、手数料の何%かを歩合給で支給される社員であれば、電卓で「これを決めたら歩合給はいくらだろう?」と電卓を叩いて「捕らぬ狸の皮算用」を始めています。何か急に「この価格で応じなければ、もっと低い指値が来ますよ」と、ツメてきた時、「決めたい」業者の本音を是非察して下さい。
5)両手になった際には売主・買主どちらの味方か
マンション売却を「専任」「一般」どちらで受けた業者も、自ら買主を見付けられたら「両手」の取引となります。すなわち、(3%+6万円)×1.08(消費税)の仲介手数料を、売主・買主双方から得られますので、不動産業者にとって「おいしい」取引であると言えます。近年、この「両手取引」を放棄して、「買主は手数料ゼロ」を謳う業者がかなり増えました。その最も大きな会社が「ソニー不動産」でしょう。
実は私自身も法人経営者時代、この「両手放棄」も集客システムで集客すべく、国民金融公庫へ出向いた事がありました。担当者と面談して事業計画書を手渡すと、一読するなり「さっきの方も『両手放棄』のモデルでしたよ」。そう、一笑に付されて融資が受けられなかった苦い思い出があります。
「不動産業界の変革」「アメリカでは両手取引はしない」など、様々な理論武装の奥にある本音は、一にも二にも「集客」だと思います。さて、「両手」になった際、業者は「売主」「買主」どちらの味方になるのでしょうか?
私の経験でハッキリと言います。どちらの味方でもないが、売主・買主それぞれの味方を演じます。「両手」は「オイシイ」のですが、仲介する立場の業者は結構、辛い立場に置かれます。売主からは「買主の言いなりじゃないか」と言われ、買主からは逆に「売主の味方で交渉してくれない」と言われたり、気遣いの足りない言動、特にニュアンス一つ間違えただけでどちらかが気分を害して話が壊れれます。
だからこそ、「両手」の場合、双方の味方であると演じるのです。不動産業者の最大のミッションは「決める」ことなのですから。
マンション売却前に仲介業者の本音を確認
あなたの意向とは違う考えの業者もいる事実
この記事では以下の内容を紹介しました。
いかがでしたか?業者の行動の裏には取引当事者に言えない「本音」がありますので、知っておくと良いでしょう。業者は仲介手数料が貰えなければタダ働きですから、高値査定でまず最初の3か月間は専任媒介契約で両手を狙い、指値が入れば根拠を上げて値引きに応じるよう、沢山の根拠を提示して説得にかかります。そして両手取引となれば売主・買主双方の機嫌を壊さぬように、どちらの味方にもなるように演じるのです。
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