家を売る方法はこの3パターン。それぞれのメリットと注意点

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女性 快適な部屋

目次

家を売る方法は不動産業者の仲介だけ?

住宅購入 女性

一般の方にとって家を売るのは一生に一度きりかもしれません。それゆえ不動産売却のプロである宅建業者=不動産屋が存在し、業者は従業者5人に対し一人の割合で専任の宅建取引士(=以前の宅建主任者)を置くことが宅建業法で義務付けられています。宅建業法は消費者保護の観点から作られたものです。

では宅建業者に全てを委ねておけば安心でしょうか?業者も商売をしていますから、カケヒキもありますし、利益を高めるように動きます。

  • 「不動産業者に任せると騙されそうで怖い」
  • 「エスクローという言葉を見付けたけど、何だろう?」
  • 「昔オークションもあったけど、今もあるのかな?」

不動産業者のイメージは「カケヒキ上手」「口が上手い」「騙される」などなど。では自分の家=「マイホーム」を売るパターンにはどのようなものがあるのでしょうか?幾つかのパターンと注意点をまとめてみました。

家を売る方法はこの3パターン。メリットと注意点

賃貸

パターン1 不動産業者に売買仲介を依頼する

一番ポピュラーで「王道」とも言えるのが、不動産取引のプロである宅地建物取引業者=宅建業者つまり「不動産屋」へ全てを任せる事でしょう。宅建業者は土地・一戸建、マンションなど、あらゆる不動産の売買・賃貸を扱うことを目的とした業者であり、各都道府県知事(複数に営業を置いた場合国土交通大臣)から免許を受けた不動産取引のプロフェッショナルです。

メリット

  • 不動産取引について法律上認められた業者が取引をサポートする点で安心できる
  • 物件情報の他業者との共有とマス媒体やネット広告への掲載により広く買主を求められる
  • 契約に至らない限り原則として手数料を支払う必要がない
  • 契約から決済まで一連の手続きの全てをサポートするため面倒がない

デメリットと問題点

  • 成約時に契約金額の3%+6万円を上限とする仲介手数料を支払う必要がある
  • 依頼する不動産業者の力量や経験度によって成約までの期間や成約金額に差異が生じること
  • 業者利益の追求優先により「両手」取引を狙うため他業者へ情報を開示しないケースがある
  • 高額査定によって専任媒介を受け(高値受け)値下げ交渉まで放置されるケースがある

問題点の多くは業者利益追求によるカケヒキによるものだと言えます。それでも不動産取引のプロフェッショナルである業者に任せることが最も安心できる方法だと思います。その不動産業者も実は得意分野によっていくつかに分けられます。

住宅ローン

① 総合不動産業者

いわゆる「大手」と呼ばれる三井、住友、野村、東急などは不動産分野のほぼ全ての業務をこなしています。すなわち「開発」「分譲」「売買仲介」「賃貸仲介」「売買・賃貸の代理」「ビル管理」など、幅広い分野をほぼ全て扱っている業者のことです。

② 売買仲介専門業者

文字通り売買仲介専門で賃貸仲介を基本的に扱っていない業者です。

③ 賃貸仲介専門業者

売買は扱わず賃貸仲介に特化している業者です。

④ リノベーション業者

綺麗な部屋

20年前は「買い取り転売業者」と呼んでいましたが、不動産業界に「カタカナ用語」が流行り出した15年前位から「リノベーション」という名称がいつの間にか定着しました。基本的にマンションを中心に、中古の一戸建住宅などを安く買い取り、リフォームを施した後、利ざやを乗せて転売する事を繰り返す業者です。

⑤ ディベロッパー

これを分類するかどうかはさておき、大規模な土地を買って、土地上に分譲マンションを建築して販売することを専門とする業者です。「総合不動産業者」の大手は三井、住友、野村、東急共に「ディベロッパー」部門と「仲介(流通営業)」部門とを分社化してあります。例えば「三井不動産」と「三井不動産販売」「三井リハウス」、「住友不動産」と「住友不動産販売」、「野村不動産」と「野村不動産アーバンネット」などの分類がそれです。

私は分社前の野村不動産出身ですが、所属していた「流通営業部」が「野村不動産ホールディングス」上場時に「野村不動産アーバンネット(株)」として分社しました。

⑥ ハウスビルダー

ある意味「ディベロッパー」と同じですが、いわゆる「建売業者」のことを「ハウスビルダー」と言います。分譲に適した大規模な土地を仕入れ分割し、土地上に一戸建住宅を建築して販売する事を専門としています。

※注意点
この分類は私の個人的な分類であり、不動産業界共通の認識ではありません。あくまでもこの記事を読んでいる読者の方が理解できるように分類しました。

その上で「家を売る方法」に戻りますが、土地・戸建・マンションを売る方法は①か②に任せることが基本になります。通常、マイホーム=家を売る一般の方が、自分から直接、④リノベーション業者や小規模な土地に「ミニ戸建」を建築する⑥ハウスビルダーへ飛び込むことはないと思います。

ほとんどが①②の業者が「最後の手段」として提案するか、顧客から「売却を近所に知られず売ること」「早急な換金」を求められた場合に、買主として紹介されるケースが一般的です。したがって、私はパターン1をさらに次の(A)(B)に分けてご紹介します。

(A)一般的な不動産業者(①と②)に依頼

重ねて説明しませんが、売買仲介を専門に扱う業者に売買仲介を依頼します。 依頼方法については本サイトの別記事に「専任」「一般」など媒介契約の選び方等を記載してあるのでお読みになって下さい。

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(B)リノベーション業者(④)に持ち込む

この記事でたぶん誰も書かないようなマイホーム=家の売り方をご紹介します。 もっとも「多少安くとも早く売りたい」「市場に物件を掲載せずに売る」「近所に売却行為を知られたくない」といった特殊な事情がある方に提案する売り方です。

① ②の業者回りで紹介される場合、④のリノベーション業者は「買主」として手数料を支払います。 業者同士の場合、3%+6万円+消費税を満額払うことが普通です。買い取る金額が高ければ手数料で調整され、2%にされたり、場合によっては1%の場合もあります。

逆に驚くほど安い金額で仕入れられた場合、6%を払うことで今後も物件紹介を得ようとする業者がいるのです。

(参考)
宅建業法で手数料の上限は3%+6万円と決まっているため、6%は業法違反です。そこで法定上限を超える部分は「コンサルティングフィー」「業務委託手数料」等の名目を付けて授受します。④のリノベーション業者は常に「仕入れ」「販売」を繰り返さないと資金ショートを起こして潰れてしまいますから、物件の仕入れは死活問題。必死です。

リノベーション業者へ直へ持ち込むメリット

その④のリノベーション業者へ直接マイホーム「家」を売りたい方が持ち込んだらどうでしょうか?

まず仲介業者を介しませんので手数料を支払う必要がなくなりますし、持ち込んだ方も相手が「買主」なので手数料を払う必要がありません。「不動産業者」だから仲介手数料を支払うのではなく、間に入って「仲介」をして貰った報酬として支払うのです。

だとすれば、お互い手数料負担もない取引であれば「手数料分高めに買って頂けませんか?」という交渉をすることができ、その結果、①②を通さず通常の買取り相場よりも手数料分高めに買い取って貰うことができるかもしれません。しかも結論は早ければその場で、遅くとも1日、2日で購入するかの結論が出るはずです。

もっとも相手はプロの不動産業者です。あなたが交渉力に自信がなければお勧めはできません。とはいえ互いにメリットがある事ですから④の業者は邪見にしないはずです。なお、「家」と言っても300坪を超える大規模地をお持ちの方でしたら⑤⑥へ同様に直接買い取り交渉することも当然「有」です。

なお、「家」と言っても300坪を超える大規模地をお持ちの方でしたら⑤⑥へ同様に直接買い取り交渉することも当然「有」です。

パターン2 個人間売買

住宅

不動産業者に任せるばかりがマイホーム=「家」を売る方法ではありません。直接自分で個人に売る事も方法の一つです。

個人間売買のメリット

  • 仲介手数料が発生しないのでコストが安い
  • 成約価格をカケヒキで下げられることはない(個人からのカケヒキは勿論ある)
  • 隣接地が買主となればすぐに成約できる可能性もある(但し代金決済が早いとは限らない)
  • 敷延などの隣接地所有者が購入する場合高値売却の機会を得られる

個人間売買のデメリット

  • 売主買主共に不動産知識がなければ契約行為がスムーズに進まない
  • 重要事項説明書の作成は必要がないが、そのため告知事項が十分でなくトラブルの火種を抱える
  • 買主を探す方法が少ないため売却期間の見通しが立たない

個人間売買の方法は買主を探す方法が限定されることや、不動産知識がないことによるトラブル発生のリスクが高いことが大きな問題点だと言えます。

個人が自分で買い手を見つけられる?

一番の問題点は集客や物件情報の告知でしょう。REINS(=レインズ=不動産適正取引推進機構のオンライン)に掲載することも、自ら折込チラシを打つこともできませので告知方法が限られます。ヤフオクは不動産の出品は不可能ですが、TVでCMも公開中の無料公開掲示板「ジモティー」は不動産の個人間売買も行えるようです。

Facebookで不動産を売った話は聞きませんが、今はインターネットがあって当然の時代で、ほとんどの人がPCでなくスマホで物件情報を見る時代です。個人が直接物件情報を公開するのは個人情報を垂れ流すことになるため非常に危険な方法でしょう。ですが今後不動産の個人間売買サイトが作られることもあるかもしれません。

アナログな方法が有効なことも

ネットばかりに目が行きがちですが、個人間売買に関する限り、実はアナログな方法が有効な方法です。

「不動産はまず隣三軒両隣を当たれ」……私が売買仲介の営業マンになりたての時、鬼軍曹の支店長が何度も私に言ったものです。実際、地方でなく都心でも隣地に話を持ち掛けたらトントン拍子に話がまとまるケースは良く聞きます。

(参考)
金銭的余力がある場合、隣接地所有者にとって「隣地」が自分の土地に併合できれば面積も増え、庭のスペース拡大で日当たりが大幅に改善します。
また、無道路地などの「欠陥敷地」の所有者にとっては手前の住民が「売る」という話を持ち掛けてきたら住宅ローンを組んででも購入を考えます。隣接地の併合によって、建築基準法上の接道義務(幅員4m以上の道路に間口2m以上接すること)が実現できれば、敷地延長(敷延)=路地状敷地=旗竿地=専通などと呼ばれる敷地の価値は整形地になることによって大幅に増加します。

このように個人間売買というマイホーム=「家」を売る方法も捨てたものではありません。

パターン3 エスクロー

住み替え

エスクローとは日本の不動産売買に関して簡単に言うと「個人間売買の専門家によるサポート」「取引の安全を保証すこと」です。もっとも正確な意味はもっと難しいので、私がかなり簡単に書きました。Wikipediaで正確な意味をご確認下さい。

完全な個人間売買ですと重要事項説明書の告知義務もありませんし、売買契約書もネットでサンプル契約書を見たからと言って簡単にできるものではありません。当然、トラブル発生の危険が大きいのです。そこで専門家による「エスクロー」サービスが存在します。

売買契約書などの法律関係は弁護士が、登記は司法書士、境界確認や測量が生じれば土地家屋調査士、不動産の物件調査や査定は不動産鑑定士、ローン計算はFPが、それぞれの専門分野に応じて取引をサポートします。

エクスローのメリット

  • 個人間売買に対し各分野の専門家が取引をサポートするためトラブルを回避できる
  • 依頼するエスクロー業者によるが一般的に不動産業者の仲介手数料よりもエスクロー報酬は安価

エスクローのデメリット

  • 業態がイマイチ確立しておらず依頼できる業者が少ない
  • あまり高名な専門家がいるとプライドばかり高く報酬が高くなる傾向がある
  • 「専門家集団」を謳っていても所詮寄せ集めの烏合の衆である業者の方が多く選別が難しい

エスクローはもっと業態的に確立すればいいのですが、この方法はプライドが高い専門家同士を組織化する事自体が難しく、上手く機能している「エスクロー」業者はほとんどが金融機関などの法人をターゲットとし、個人を向いていない事が大きな問題点です。

(参考)

この用語は10年前に今は亡き不動産業界の風雲児が良く使っていました。

その方は元「IDU=アイ・デイ・ユー」「マザーズ・オークション」の社長であった故・池添吉則氏です。2014年6月、志半ばの50歳で亡くなった池添社長は正に「業界の変革者」でした。

現在は不動産業界に一石を投じているのは「ソニー不動産」ですが、かつてマザーズ上場企業「IDU=アイ・デイ・ユー」CEOとして「不動産業界の変革」「クローズドマーケットの開放」「真のオープンマーケットの実現」などを掲げ、「マザーズオークション」を開催し、一時期は三輪明宏氏がキャラクターを勤めたTVCMも公開されていました。

エスクロー専門の上場企業も

「エスクロー」の名称を大々的に使っている上場企業があります。「エスクロー・エージェント・ジャパン」です。私が鑑定士の実務経験を積んだ総合事務所の代表が立ち上げて、10年で上場させた企業です。

あまりメジャーな方法ではありませんが、不動産鑑定士として指摘するとすれば、各分野の専門家が独立事務所を構えていると同一企業内で案件を扱うように動けないという大きな問題点があげられます。

土地家屋調査士が測量で50万の仕事をしたのに対し、登記担当の司法書士は所有権移転登記一本だけで12万の報酬だとすれば不公平感も生まれます。かといって等分に配分しようとすれば各専門家の業務に見合う報酬でなくなってしまうため、専門家を組織化することは容易ではないのが士業として私自身が思います。

3つの家の売却方法:まとめ

女性

家を売るなら不動産業者を選ぶ方が結局安心

この記事では以下の内容を紹介しました。

今回はマイホーム=「家」を売る方法を不動産業者以外で絞り出してみましたが、個人間売買は隣地や近所で決まらなければ第三者の買主を見付けることが難しく、エスクローは個人向けが発達していないため、手数料を支払って不動産業者に任せることが最適な方法だと思います。

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