サラリーマンに転勤は付き物です。せっかく手に入れたマイホームなのにローンを払い始めて数年で転勤の辞令を受けた方も多いことでしょう。

そこで急な転勤の際、マイホームを売却せずリロケーションする場合について売却か賃貸するか悩んでいる方向けにまとめてみました。

家を売る以外にリロケーションの家賃収入でローンを払う選択も

定期借家法施行で生まれたリロケーションという方法

家

最近はごく普通に見かけるようになったリロケーションは2000年の定期借家法施行を機として一気に広がりを見せました。

なぜなら旧借家法は借りて住んでいる住人を保護の観点から一度貸すと簡単には再び自ら物件に住むことができなかったのですが、賃貸期間満了で賃貸人である大家へ物件を明け渡せるようになったからです。

「5年は戻ってこれないからとりあえず5年で賃貸で家を貸したい。5年後は会社の人事次第で賃貸を続けるか、家に戻るかを決めたい」というスタイルでマイホームを賃貸できるようになったのです。

まだまだ知られていないリロケーション

リロケーションについて詳しく知らない方の方が多いと思います。

  • 「急な転勤で売却も考えているけどリロケーションして物件を保有していたい」
  • 「海外転勤が決まってしまったが、リロケーションの方法について良く知らない」
  • 「リロケーションすることにはメリットばかりでデメリットはないのか」

なかなか賃貸まで知識を持っている方は少ないと思います。 そこで今回はリロケーションのメリット・デメリットと複数の依頼方法について詳しくお話します。

急な転勤!売却の前に考えたいマイホームのリロケーション

リロケーションとは?その意味をまず知ろう

綺麗な部屋 女性

リロケーションとは英語の「relocation」(移転または配置転換)からとった転勤者の留守宅を一定期間賃貸する業務のこと。

「転勤者の留守宅」を「一定期間賃貸」する業務とある通り、賃貸用に購入したワンルームマンションや一棟アパート・マンションを賃貸に供する場合とは目的も全て異なります。

ポイント

賃貸する目的物が「留守宅」つまり、いつかは所有者が戻ってくる間の「留守」に、期間限定で賃貸に供することをリロケーションと言います。

リロケーション(家を貸す)することのメリットは?

女性 物件へのアドバイス

メリット1 空き家の劣化防止

とくに木造の日本家屋がそうですが、居住しなくなった住宅の劣化は急速に進みます。湿気の多い日本の環境では、定期的な空気の入れ替えなどをしないと、みるみるうちに痛みます。

リロケーションで賃貸に供した場合、賃借人がマイホームの物件に居住しますから、自らの家族が住んでいるのと同様に利用され、空き家にした状態の劣化を防ぐ効果があります。

メリット2 家賃収入が得られる

賃料収入が得られます。

これは家主自らが直接借主に賃貸する場合も、リロケーション会社に一括で借り上げて貰った場合でも、賃料の額が異なるだけで一定の賃料収入を得られます。

ほとんどの方は、マイホームの住宅ローンが残っている状態で転勤するでしょう。

賃料収入を住宅ローンの支払いに充当できるだけではなく、一時金などの収入で固定資産税なども支払えます。

メリット3 マイホームを手放さずに済む

なによりも、念願のマイホームを売却換金せず、そのまま所有し続けることができます。

転勤が終われば、再びマイホームに戻ってこられます。

リロケーション(家を貸す)のデメリットは?

住宅を持ち上げる手

メリットだけでなくデメリットも当然あるので簡単に説明します。

デメリット1 家の汚れ

リロケーションで賃借人に貸せば、当然賃借人が利用することによる生活の匂いや汚れが付くことは間違いありません。

もっとも退去時の現状回復義務により、通常使用による損耗は貸主、故意過失による汚れなどは借主負担として退去時に現状回復がなされます。(東京都賃貸トラブル防止ガイドラインによる)

デメリット2 家賃収入は割安

家賃面を見ると、定期借家契約を用いるリロケーションの場合、付近の普通借家契約物件に対し1割前後賃料水準が低くなる傾向があります。

契約期間がかなり短期間だった場合やリロケーション業者との契約によっても2割安、3割安の場合もあり得ます。

借りる側も、たとえば1年間限定がなされた一戸建住宅を借りた場合、仮に4人家族で子供が小学生2人と考えたら、1年後にまた違う物件を探して住み替え、転校なども考えなければならず、その分安くなければ借り手が付かないこともあり得るわけです。

ポイント

リロケーション業者との契約形態が転貸借、すなわちサブリース契約だった場合は、とくに賃借人がリロケーション業者となり、彼らは転貸借(サブリース)して転借人から賃料を得て、自分達の利益を差し引いた額を家主に払うため、第三者に直接貸す場合に比べて安くなることは言うまでもありません。

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リロケーションを依頼する業者と契約方法について

税金

リロケーションも賃貸借ですから普通の賃貸同様、賃貸専門の不動産業者に任せることも一つです。

多くの場合、リロケーション業者とは業務委託契約を締結するケースが多く、賃借人の募集から管理・集金業務までを任せるケースが多くなっています。

普通は持ち主が希望した人(例.禁煙者、ペット不可等)に家を貸せるような「媒介契約」のケースが多いです。国内転勤の場合は媒介契約でもいいでしょう。

しかし、家主の転勤先が海外の場合、賃貸借契約締結から募集・集金業務、管理業務の他一切を業者に任せる必要があります。

この場合は「代理契約」を締結して、賃貸借契約も業者が家主=賃貸人の立場で契約行為を行うことになり、住む人を決定するのも不動産会社になります。

このようにリロケーションの契約形態もいくつかあることに留意してください。

リロケーションの費用はどの位かかるのか?

疑問 女性

通常の賃貸管理を不動産業者に委託した場合、賃料の5%前後で契約するケースが多いと思います。

それに対しリロケーション会社は通常の場合よりも少し高く賃料の10%前後の手数料を徴収するケースが多く、業者に委託する内容が多ければ多い程さらにパーセンテージを上げる業者もいます。

これは家主が国内での転勤だった場合です。

賃貸借契約も自らが契約にやってくるなど自分が動ける範囲で動き、不動産業者に募集だけを任せた場合と、海外赴任で帰国せず完全に全部を業者に任せる場合とでは費用は異なります。

リロケーションと通常の賃貸借との相違点は何か

家 住宅

最初にお話しした通り、リロケーションは定期借家で契約するのが基本なので、旧借家法のように正当事由がなければ半永久的に貸したままになることがありません。

契約期間が満了すれば原則は更新がないため、その時点で賃借人は明け渡し義務を負い退去しなければなりません。

この「更新が原則ない」という点が2000年施行の定期借家法のキモであったわけです。したがって、リロケーションは帰任する時期がわかっている場合には非常に有効な手段です。

もちろん、予定が変更になり帰任が伸びた場合など、賃借人との合意で契約時間延長も可能ですし、劣悪な賃借人を入居させてしまった場合は期間満了によって退去させることも可能になったわけです。

通常の賃貸借は長く入居して貰って長期安定的な賃料収入を得ることが目的ですから、リロケーションにおける定期借家とは目的も異なっているのです。

マイホーム売却とリロケーションはどっちがおすすめ?

需要と供給

売却の場合、相場通りかそれ以上で売るために一定の期間を要します。

年間で一番動く1月後半から3月中旬までの一年間で最も売買市場に需要者が溢れる時期に売り出すことが重要になってきます。

一方、リロケーションは突如の転勤によって生じるものです。不動産価格の上昇期や、すぐには売りたくない事情もあるでしょう。海外転勤などで全てを不動産業者に任せたくない場合も多いです。

リロケーションなら、一旦賃貸収入を得ながら物件を所有したまま、売却するか否かを考える時期も作れます。

一番まずいのは「何も活用しないこと」です。何も活用しなければ、マイホームを経年以上の劣化を招きます。

ポイント

リロケーションによってマイホームを一時的に賃貸物件として運用し、賃貸収入を得るのは、不動産として理に叶った方法。

その上で「売却か」「賃貸か」判断してもいいではないでしょうか。

リロケーションは転勤時のマイホームを活用する有効な手段

空き家にしておくのはもったいない!

この記事では以下の内容を紹介しました。

定期借家の普及によって通常の賃貸市場に貸し出されている物件の多くに「定期借家」の「定」の字が付いている物件が多くなってきました。とくに、高額な戸建て住宅にその傾向が多く見られます。

「更新可能」と書いてある物件は一応定期借家にしておき、賃借人の質が悪ければ期間満了で退去させ、良ければ更新して引き続き入居して貰おうということです。

リロケーションにはメリット・デメリットの双方があります。しかし、不動産を活用しないことは、マイホームを経年以上に劣化させる原因になります。

転勤が決まってから急いで売却するよりも、リロケーションで期間設定をした上で賃貸借に供し、その間に売却時期を待つのもまた一考です。

編集部から

購入した住宅には、もう住まなくなる可能性が高い。そんな状態になったら、まず住宅ローンの残債を確認してください。

ローンの残債が少なく、住宅を売却した金額でローンを全て返済できそうなら、売却も賃貸も可能でしょう。

一方、売却できそうな金額よりもローンの残債が多いのなら、自己資金で穴埋めする必要があります。よって、売却はおススメできません。この記事で紹介したリロケーションが有効です。

リロケーションをを利用して賃料でローンの残債を減らしていけば、そのうち選択肢が広がっていくでしょう。

買取博士というサイトが、このような悩み相談にも対応していますので、まずは無料相談してみてください。

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不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。