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「住宅ローンが残っているのに引越しをしたい!」と考える人は、少なくありません。仕事の都合であったり、家族構成が変わったり、とこれまでの住宅では家族が住みにくいケースはいくらでもあります。しかし、住宅ローンが残っていた場合、動きにくいのも確かでしょう。
住宅ローンが残っていても、スムーズに引越しをする方法をこの記事で紹介します。今まで「動けない」と考えてきた方は、是非ここでの情報を参考にしてください。
住宅ローンがあるけど引越しする方法
銀行との交渉がカギ
住宅ローンの残っている方が引っ越しをする場合、まずは銀行などの金融機関との相談が必要です。
借入金を残したまま銀行などへ相談せずに無断で引越しをしてしまうと、状況次第では住宅ローンの一括返済を迫られる恐れがあります。
銀行と話し合う内容は引越しの目的別に変わる
もちろん、そのようなケースは稀かもしれません。しかし、大きなお金が絡む以上、まずは銀行に相談をして手続きをしてください。さて、転勤、一時的な引越し、賃貸に出す、売却……と引越しにはさまざまな目的があります。目的別に、銀行とどのような話をすれば良いのかをまとめましたのでご覧ください。
住宅ローンが残っている引越し:まずは銀行との交渉から
銀行は住宅ローンなどでお金を借りる場所でもあります。住宅ローンで借りるお金は相当な大金ですから、やはり銀行とはきちんと交渉する必要があるでしょう。ただし、金融機関の融資担当はなかなか一筋縄ではいきません。住宅ローンの借入審査の時には気づきにくいかもしれませんが……。
住宅ローンの返済を迫られて終了のパターンも
住宅ローンなどの融資に関しての変更や相談の流れではとくにそうです。何の知識も持たない素人が単身で相談に行けば、ニッコリと笑って「契約書通り、住宅ローンのご返済をお願いします」と門前払い……これが相場でしょう。
とは言え、引越しの事情や残債(住宅ローンの残り)によっては話し合いに応じてもらえます。
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住宅ローンの必須条件は『自己居住用』のマンション
銀行との相談に先立ち、住宅ローンの性質を理解しておくと良いでしょう。 住宅ローンは契約者本人が自宅として使用する『自己居住用』のローンです。住宅ローンはきちんと毎月の返済さえしていれば、勝手に引越してもいいものではありません。
それは、住宅ローンが一定の条件下で融資がおりているからです。その条件の中に『自己居住』というものがあります。住宅ローンでは最も重要な条件の一つです。
住宅ローンの大前提:『自己移住用』とは?
住宅ローンの条件である自己居住用とは、文字通り自分が住むということ。継続して生活の拠点として寝起きする住いであることが条件です。セカンドハウスや別荘のような使い方や、最初の数日だけ住んで自分は引越して賃貸へ出すような使用方法は認められていません。
「何を当たり前のことを」と思うかもしれませんが、国のマイホーム政策もあり、低い金利や長い返済期間そして税金面など優遇の多い住宅ローンの場合には、これはとても重要な要素です。
住宅ローンが残る中、やむを得ない事情で引っ越しをする場合
転勤や親の介護などの事情から引越しをせざるをえない状況は、誰にでも起こります。そういった不可抗力的な事情でも、原則として『自己居住用』に変化はありません。別の住まいへ引越した場合には、仮にきちんと住宅ローンを支払っていたとしても、債権者(銀行など金融機関)から一括返済を求められる恐れがあります。
ただし、転勤や親の介護は一般的に起こり得る現実的な出来事なので、ほとんどの銀行では住宅ローンのある引越しについて一定の規定を設けており、比較的スムーズに対応される仕組みになっています。
転勤が理由で引越しをする場合
たとえば、引越しの理由が転勤の場合です。職場で転勤が決まり家族全員で赴任先へ引越しをするのなら、銀行員も「空き家のまま住宅ローンを払い続けろ」とは、まず言いません。将来的に自宅マンションへまた引越して来る可能性や残債の額を検討し、売却や賃貸に出すことを承諾してくれることがほとんどです。
銀行員が納得するかどうかが重要
もちろん、承諾を得るまでには状況の説明や条件のすり合わせなどは必要。スムーズに進む場合もあれば、難航するケースもあるでしょう。要は銀行員が「引越しするのは仕方ない」と納得するかどうかが重要。その上で自宅マンションをどうするかの相談をする形になります。
担当者や融資課の課長などが納得しても、稟議を支店長や支社など上へ更に上げなければならないケースも。その段階から却下されることは少ないとはいえ、引越しや住宅ローン返済への条件が追加される場合もあります。
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転勤や介護:引越し事情によっても異なる対応
次に、住宅ローンを完済していない人の引越しについて、銀行がどのポイントを見るのか解説します。
銀行が見るポイント①:引越しの事情
引越しの理由によって、銀行の対応は大きく異なります。転勤や介護のようなやむを得ない事情による引越しの場合、銀行側も柔軟な対応をしてくれることがほとんどです。
次いで、比較的承諾を得やすい引越し理由が、家庭の事情での引越し。転職や実家の両親との同居などがこれに当てはまります。これらが理由の引越しならば、転勤や介護ほどではありませんが比較的承諾を得やすいと考えられています。他には通勤や通学の利便性のための転居や、近隣トラブルに伴う引越しもかなり現実的ですが、一般的にはこのあたりから銀行の対応が厳しくなってきます。
銀行が見るポイント②:引越し先の住居費
引越し先で新たに家賃が発生する場合や住宅ローンを組まなければならない場合は、銀行の対応がかなりシビアになります。
家賃や住宅ローンという「住居費」への費用が二重にかかるため、家計を圧迫しやすくなるからです。「既存の住宅ローンの返済に支障をきたす恐れがある」と銀行は考えます。
一方、社宅のように会社が家賃を全額支給する場合や、介護や同居などで実家へ住むことになる場合。このようなケースならば、住居費が二重になることもないので、比較的銀行も緩やかな対応となります。
銀行が見るポイント③:住宅ローンの残債額
状況や住宅ローンの残高に応じて売却か賃貸のどちらかを選ぶことになります。
住宅ローンが残るマンションは売却?賃貸?
住宅ローンが残っているマンションを売却するときの注意点
一般的には売却代金で住宅ローンの残債を一括返済しますが、自宅の売却価格によっては住宅ローンを返済しきれずに残債が残ってしまうことも。その場合、自宅の売却後も住宅ローンを毎月返済していくことになります。
買い替えの場合は、自宅を売却せずに自宅の住宅ローンとさらに新しく購入した不動産の住宅ローンの2つを同時に借入(ダブルローン)する方法が1つ。売却して残債を購入する住宅ローンに組みこんで一緒に返済していく(借り替えローン)方法もあります。
売却するのならまずは一括査定
売却する際は、一括査定サイトなどを利用して複数の不動産会社へ査定を依頼。大まかな売却価額をまずは把握してから、自宅マンションの住宅ローン返済計画を立てると良いでしょう。
一括査定サイトを利用するのなら、おすすめはすまいValueです。大手不動産6社からの査定を一括で申し込めます。もちろん査定は無料です。
すまいValueは不動産業界をリードする6社が運営する不動産売却ポータルサイトです。
住宅ローンが残るマンションを賃貸に出すときの注意点
残債が大きすぎて売却できない場合や、将来的には戻ってきて居住するという場合は、売却ではなく賃貸を選択することも多いです。賃貸の場合には2つ注意点があります。
注意点①: 大家業は事業者である
会社員でも家賃収入を得れば個人事業主です。事業者としての責任と貸主としての義務も当然生じます。突然の設備故障による修繕費の支出や空室リスクなどもあります。義務やリスクなどを軽減したいのならば、不動産会社とサブリース契約を結ぶのも良いでしょう。
これは転貸借(又貸し)契約であり、不動産会社が貸主(転貸人)として一般賃貸入居者へ貸し出します。大家としての負担が減るメリットがありますが、その分だけ家賃収入も減ります。
注意点②:住宅ローンから事業用ローンへ借り替えになる場合がある
住宅ローンは自己居住用のため、さまざまな恩恵がありました。しかし、人に貸す場合では、住宅ローンが適用されずに、事業用や賃貸住宅向けの融資へ切り替えとなることもあります。
これらの融資は住宅ローンに比べれば金利も高く、短い返済期間となることが多いでしょう。このため、毎月の返済額は今までの住宅ローンよりも高くなるので、家賃額の設定については十分に検討する必要があります。
住宅ローンの借入金を完済していなくても引っ越しは可能!
大切なのは銀行との交渉と売却と賃貸の判断
この記事では以下の内容を紹介しました。
このように住宅ローンがある状態でも引越しは可能です。しかし、銀行との相談や交渉、あるいは不動産の売却か賃貸かの判断などは、なかなか一般の方にはハードルが高いかもしれません。
しかし、住宅ローンの仕組みや銀行などの考え方、ご自身の引越しの事情や自宅マンションの扱いの選択肢について、しっかり把握しておけば難しいことはありません。引越しが必要な状況ならば、一人で思い悩むことなく、まずは銀行などへの相談をおすすめします。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧