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自宅を売却して新居を購入する住み替え。住み替えには売却と購入の2つの要素があるため、税金面がどうなるのか気にかけている方は多いです。この記事では、住み替えで住宅ローン控除を使いたい方のために、控除が適用される条件や注意点を詳しく解説しています。
住宅ローン控除の概要
住宅ローン控除は、正式名称を「住宅借入金等特別控除」と言います。まずポイントなのは、住宅ローン控除は「物件の購入」に関するお得な制度であること。
この制度は、個人が住宅ローンを利用してマイホームの購入やリフォームを行う場合に、金利負担を軽減するためにつくられたものです。一定の要件を満たすことで、所得税からの控除や、翌年の住民税から控除が受けられます。
住宅ローン控除制度は税金を払う上でのお得な制度
所得税や住民税は、所得に対してかけられる税金です。所得とは収入から経費や控除を差し引いたもの。経費や控除を差し引いて最終的に残った所得が少なければ当然それにかけられる税金が安くなります。控除には配偶者控除や社会保険料控除などあり、社会保険料控除であれば健康保険料や年金などで支払った金額が所得金額から差し引かれるというものです。
ひとことで言えば税金を払う上で、お得な制度。さまざまな控除のうち、住宅ローンに対しての控除が住宅借入金等特別控除である、住宅ローン控除というわけです。とくに税額を直接控除する住宅ローン減税は、メリットがあります。
住宅ローン控除の期間と金額
住宅ローン控除が受けられる期間は、10年間です。住宅ローン控除で減税される期間は、新居への入居日によって異なりますが、1年ごとの控除される金額の計算方法は同じです。
計算式は「毎年末の住宅ローン残高の1%」となります。控除額は1年間で最大20万円、合計最大控除200万円です。毎年末の住宅ローン残高の1%と比べて、低いほうの金額が控除額となります。
不動産会社が売主物件は超お得!
更に不動産会社が売主の物件を購入すると、控除期間は13年、控除額も年間40万円まで最大控除額が520万円まであがるので非常にお得です(不動産会社が消費税課税業)。ここで注意したいのは、この計算で出された数値と同じだけ税金が安くなる点です。
住宅ローン減税制度は「税額控除」と言い、直接所得税から差し引かれる控除です。たとえば、社会保険料控除は所得から差し引く「所得控除」であるため控除額と安くなる税金はイコールではありません。最終的な所得に対して一定の税率で税金がかけられるからです。
一方、住宅ローン減税制度は「税額控除」であるため、かなり大きな節税効果があります。
住宅ローン控除の適用条件
住宅ローンの控除を受けるためにはいくつかの要件を満たす必要があります。さまざまな要件がありますが、主なものは以下の通りです。
- 控除を受ける人が住宅の引き渡し日から6か月以内に入居すること。
- 控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下
- 床面積が50㎡以上
- 10年以上かけて返済する住宅ローンであること。
- 居住した年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていないこと
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住み替えでは売却時の税制優遇と併用できるかがポイント
住宅ローン控除は、住宅の購入時における減税制度です。住宅に関する税金の優遇制度は、購入時だけでなく「売却時」にも設けられています。
住み替えをする際には、売却時の優遇制度と併用できるかがポイントです。結論としては、物件の売却から新居の購入・居住までの期間に制限はあるものの、併用は可能です。
段落
住宅ローン控除の適用には「居住した年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていないこと」が条件になっています。居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用とは、物件売却時に受けられる優遇制度のこと。
つまり、新居に入居した年・前々年・前年・1年後・2年後の計5年間に売却時の優遇制度を受けていると住宅ローン控除は適用できなくなります。
物件売却時の3つの特例
住宅ローン控除を受けるためには、売却から入居までの期間を空ける必要があります。そのため、多くの場合は売却時に受けられる特例と住宅ローン控除のどちらがお得になるのか天秤にかけることになります。
売却時に受けられる主な特例は3つあるので内容を確認していきましょう。住宅ローン控除とは3つとも、居住した年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間は併用できないので注意してください。
特例その1:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
マイホームなどの自分が住んでいるまたは以前に住んでいた家を売却する場合に適用される特別控除です。所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで差し引くことができます。
つまり、譲渡所得が3,000万円以下になる場合は税金がかからないということです。自宅を売却して利益が出た際にとても重要な特例です。
主な要件
- 現在住んでいる住宅であること
- 住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること
- 他の特例を適用していないこと
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特例その2:マイホームを売ったときの軽減税率の特例
10年を超えて所有していたマイホームを売却した場合は、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は通常よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。10年を超えた所有であれば長期譲渡所得となり元々税率は低くなりますが、6,000万円以下の部分についてはさらに低くなります。
6,000万円以下の部分の税額の計算式は「譲渡所得×14.21%(所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%)」です。
ちなみに、6,000万円を超えた部分に関する税率は20.315%です。
軽減税率適用の主な要件
- 売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている
- 他の特例とは同時に適用できない(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例との併用は可)
- ・売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと
- ・親子や夫婦などに売ったものでないこと
特例1と特例2は併用が可能です。
特例その3:特定のマイホームを買い換えたときの特例
マイホームを住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却し、元の住宅を売却した価格よりも高い価格の家に買いかえた場合、元の住宅の売却によって生まれた利益に対する課税を、新居の売却時まで延長できる特例があります。
実質の税金が安くなるわけではありませんが、支払いを後回しにできるのでとても効果があります。ちなみに、特例3は特例1や特例2とは併用できません。
まとめ:どの特例を使えば得なのかは要確認!
この記事では以下の内容を紹介しました。
住宅ローン控除を使うか、売却時の特例を使うかのどちらがお得になるかは一概に言えるものではなく、試算をしたうえで確かめる必要があります。住み替えでは売却から新居への入居までの期間が短く、基本的にはどちらかを選ぶことになります。どちらも税金を大きくお得にするものではあることは間違いないので、しっかりと制度を理解した上で後悔のない選択をするようにしてください。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧