ご実家の扱いに悩む30代から60代の方のために、ご実家の売却や税金に関して分かりやすく説明をしました。
事前に知っていれば節税できたものを、知らなかったために多く税金を負担してしまった。
そんなことにならないためのご参考にしていただければ幸いです。
目次
実家を売った時に節税はできる?
実家を売った時に使える控除を知りたい
- 「実家を売りたいけど税金がどれくらい?」
- 「自宅じゃないから売った時の税金が高そう」
- 「簡単にできる節税の方法はないだろうか」
遠隔地の実家を相続しても仕事を辞めて転居する方はごくわずかです。多くの人は売却するにも四苦八苦し、やっと売れたと思っても今度は不慣れな税金の扱いで七転八倒。税金は確かに難しいです。
しかし、昨今の空き家問題に関連して、地方の実家の売却にも優遇措置が取られています。この記事では売却時の税金や節税に使えるノウハウをシンプルにご説明しております。
実家を売却した時の税金と控除
税金対策その1『所有期間の管理』
実家を売却して利益が出た場合には譲渡所得税や住民税などの税金がかかります。同じ金額で売却したとしても売却益にかかる税率が異なる場合があります。短期譲渡(5年以内)か長期譲渡(5年超)という所有期間の違いです。
[短期譲渡 5年以内]39.63%
[長期譲渡 5年超 ]20.315%
(注:譲渡所得税・住民税・復興特別所得税の合計)
極端な例ですが、たった1日違っただけでも税率が20%弱も高くなってしまうことがあります。可能であれば譲渡する日を調整して長期譲渡となるようにしたいところです。
なお、この所有期間は『買った年から売った年の1月1日』で計算します。例えば5年前の2月に購入した不動産を今年の3月に売却した場合。実際の所有期間は5年1ヶ月です。
しかし、購入した年の1月1日時点では所有していなかったため、この譲渡期間の計算方法では所有期間は4年となってしまいます。満5年を経過したから大丈夫だと思い込んでしまっていると、高い税率で課税されてしまうこともあります。
5年前後で譲渡する場合には特に注意が必要でしょう。
税金対策その2『取得費の計算』
実家を売却した際、利益である譲渡所得に税金がかかります。譲渡所得を少なくできれば税金も低く抑えられるわけです。譲渡所得は、実家を売却した金額から『取得費』と譲渡費用を差し引いて計算します。
取得費とは、実家の購入代金・建築費・購入手数料・設備費などで、購入代金や建築費は減価償却費用相当額を差し引いた額となります。それらの額は当時の契約書や領収書などで分かります。
また、「相続税の取得費加算」という特例もあり、相続発生を知った日から3年10ヶ月以内に譲渡した場合には相続税の一定額を取得費に加算できる可能性もあります。
売却する時点では取得費がいくらかかったのか不明になっていることがあります。実家を購入してから年月が経過している場合や親から相続した場合などです。
このように取得費が分からない場合には、『5%ルール』を使うことができます。売買金額の5%を概算で取得費とできるのです。不明だからと言ってゼロ円では困ってしまうので、このルールは大変助かるでしょう。
しかし、バブル期のように高値で取引されていた時期に購入していた場合には、取得費はもっと高額だったでしょう。不明だからと概算5%ルールでもさすがに厳しいところです。
住宅ローンを組んでいた場合には、抵当権の設定額が記載されている「登記簿」や金融機関の「返済予定表」が証明に使用できる場合があります。あくまで借入金の額の証明に留まりますが、それが5%以上であればメリットがあります。
また、ローンを組まなかった場合でも、代金送金の通帳記録や小切手の振出記録が残っていれば使用できる可能性もあります。
税金対策その3『被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』
マイホームの売却では「居住用財産の3,000万円特別控除」という制度があります。個人にとっては金額的に大きな控除となるでしょう。この特例の適用を受けるためにはいくつか要件があります。
[3,000万円特別控除 要件]
- 自己居住の居住用建物とその敷地や借地権であること
- 居住しなくなってから3年目の12月31日までに売却
- 取り壊しの日から1年以内に契約を締結
- 所定の期間中に一定の特例を受けていないこと
- 賃貸やその他の用途に供していない
- 売却する相手が親子や夫婦など特別な関係ではないこと
- 売却した年に住宅ローン控除をうけていないこ
1のように自分が住んでいることという要件があります。いわゆるマイホームが対象ですので別荘や仮住まいでは認められないというわけです。この特例を受けることだけを目的とした居住も対象外です。
では実家を相続した場合はどうでしょう。実家を相続して住んでから売却するのであれば可能性はあります。
ただし、この特例を目的とした居住とみなされた場合には適用されない場合もあります。
同居している場合を除けば、実家は適用外ということでしょうか?
現実問題として実家を相続して自己所有となったとしても、遠隔地ともなれば居住することはなかなか難しく、前述のように居住していなければこの特例は適用になりません。
ところが、昨今の空き家に関する社会問題の増大もあり、地方の空き家政策の一環として、一度も住んだことのない親の自宅であっても、「一定の要件」を満たした場合には「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が適用されます。前述の特別控除と同じく最大3,000万円までの控除が可能です。
控除額は同じでも要件は少し異なります。
[一度も住んだことがない親の空き家を売った時の控除特例の要件]
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。(旧耐震基準)
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと。(マンション以外)
- 相続開始直前に被相続人以外が居住していなかったこと。(人に貸していないこと)
- 相続または遺贈によるもの
- 一定の耐震基準を満たすか取り壊して売却すること
- 売却代金が1億円以下
- 相続開始から3年目の年の12月31日までに売却
(※上記2つの要件は他にもあります。詳しくは国税庁HPをご参照ください)
昭和56年6月1日からいわゆる新耐震基準の実家を相続した場合にはこの控除の対象外となってしまいます。そのような控除対象外の実家の場合、築年数が新しいことや新耐震基準なので当時の購入代金が高いということもあるでしょう。
先に述べた取得費へ計上できる金額も多くなるでしょうから、特例の控除の代わりに取得費の部分で少しでも節税を心がけることをお勧め致します。
節税に必要な知識や要件
税務署や税理士を活用しましょう
税金の知識や控除の要件に関しては、一般の方はポイントを押さえておく程度にしておいても良いでしょう。餅は餅屋。
正確な情報や判断を求めて、最寄りの税務署や税理士に相談することも大切です。物件の価格にもよって税額は異なりますが、例えば、長期譲渡(5年超)にするためだけに実家を所有するよりも、敢えて早々に処分して、3,000万円の特別控除で譲渡所得の額を控除する方が合理的という場合もあるでしょう。
専門家からアドバイスを受けながら適切な売却をされると良いでしょう。