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マンションの売買契約後、何かしらの理由があり契約解除したいと思うこともあるでしょう。実際に、売買契約後の契約解除はよくあることです。
しかし、契約内容や契約解除のタイミングによっては損してしまうこともあるので注意しましょう。
本記事では、マンションの売買契約の解除方法について解説していきます。
不動産売買契約と重要事項説明
マンションを購入しようと思うとき、売買契約書以外にもいろいろな書類にサインしていくことになるため、どの書類が大事な書類なのか分かりづらいものです。
マンション購入時には、具体的には以下のような書類にサインする必要があります。
- 買付申込書
- 住宅ローン申込書
- 重要事項説明書
- 不動産売買契約書
それぞれについて見ていきましょう。
買付申込書とは
買付申込書とは、売主に対してマンションを購入する意思表示をするものです。
単なる意思表示のため、買付申込書提出後に契約を取りやめることになったとしてもペナルティはありません。
ただし、売主は買付申込書が届くと他の購入希望者との交渉を一旦ストップしないといけません。
迷惑のかかることなので、気軽に買付申込書を出してすぐにキャンセルするといったことは控えるようにしましょう。
買付証明書・申込書の法的性格の詳細はこちらの記事をご参照ください。
住宅ローン申込書とは
住宅ローン申込書は住宅ローンを借りられるかどうか審査するためのものです。
仮審査と本審査があり、本審査は通常売買契約後に書きますが、申込書の段階では取りやめたとしても何らペナルティはありません。
ただし、一度住宅ローン「契約書」(金銭消費貸借証書)を締結して着金した後は後戻りできなくなる点には注意が必要でしょう。
申込書は複数の銀行に提出する事が出来ますが、各銀行とも審査の為に信用情報機関に個人情報の照会をします。
この履歴は残るので、あまり多く個人情報の照会履歴があると、ローンが通らないから沢山銀行をあたっているのか?等の疑念を抱かれメリットが無いので、申し込みをする銀行は事前に絞って2行、多くても3行位にしましょう。
重要事項説明書
重要事項説明書とは、マンションについて重要な内容について記されたもので、売買契約前に必ず説明しなければならないものです。
重要事項説明書にサインしたからといって、売買契約書前であればペナルティなどありません。
ただし、重要事項説明書を読んだ後に売買契約書を読むことが多いため、セットで考える必要があるでしょう。
売買契約書
売買契約書は対象のマンションについて売買することを約束するものです。
一度売買契約を締結すると、契約解除には何らかのペナルティが発生するのが一般的です。
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次項で、売買契約後の契約解除で発生するペナルティにはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
売買契約後の契約解除法とそれぞれのペナルティ
売買契約締結後も契約解除する方法はありますが、そこには何らかのペナルティが発生するのが一般的です。
ここでは、売買契約後にできる以下のような契約解除法について、それぞれの内容とペナルティを解説していきたいと思います。
- 住宅ローン特約による解除
- 手付解除
- 違約解除
- 合意解除
住宅ローン特約による解除
まず、マンションの売買契約後、住宅ローンの審査が否決であることを理由として、住宅ローン特約に基づいた解除をする場合は、ペナルティは発生せず白紙解約となります。
通常、住宅ローンの本審査はマンションの売買契約後に行います。
このため、売買契約後に住宅ローンの本審査に落ちてしまい、マンションを購入できない事態になってしまうことがあります。
売買契約前に事前審査を受けることはできますが、事前審査で承認を得たとしても本審査で否決となってしまうこともあるため、ある程度は避けられないことです。
そこで、マンションの売買契約時には住宅ローン特約といって、本審査が否決となったときは白紙解約とする特約を盛り込むのが一般的です。
住宅ローン特約のない契約も
ただし、住宅ローン特約は買主と売主の合意のもと設定されるもので、売主によっては住宅ローン特約のない契約というのものもあるため、事前によく確認しておくようにしましょう。
また、住宅ローン特約には期限が設定されています。
設定された期限を過ぎてから白紙解約はできないため、期限についてあらかじめよく確認しておくことが大切です。
手付解除
次に、マンションの売買契約後も手付解除という形で契約解除できるのが一般的です。
手付解除とは、買主から売主に対して支払った手付金を放棄することで契約を解除できるというものです。
例えば、3,000万円のマンション購入にあたり、手付金として300万円支払っていたようなケースでは、その300万円を放棄することで手付解除可能できます。
なお、場合によっては手付金が少額であったり、中には0円で契約を結んだりするようなケースもあるでしょう。
こうしたケースでは別途特約で違約金(売買契約後に解約する場合には違約金として売買金額の〇%を買主が負担する、等)を設定することも多いため注意が必要です。
なお、手付解除は通常「契約の履行を着手するまで」が期限となっています。
つまり、リフォームのために発注するなど履行に向けた着手が行われた場合には手付解除できなくなります。
ちなみに、手付解除は売主から買主に対しての契約解除についても定められており、その場合「手付倍返し」という形を執るのが一般的です。
3,000万円の売買契約で300万円受け取っていた場合、売主は買主に対して600万円負担することで契約解除できます。
違約解除
契約書に記載された義務違反による解除です。契約書に記載のある違約金を支払う必要があります。通常は売買価格の20%位に設定されていることが多いです。
これは債務不履行による解除なので厳しいペナルティがあります。
合意解除
手付解除できなくなった後に、違約解除の前にされるのが合意解除、つまり売主と買主の合意のもとであれば契約解除できるようになっています。
これは契約とは別に新たに締結済契約の処理について合意するつまり解除契約を締結する事になります。
この場合、手付放棄の額と同程度の負担に加え、実際に発注に要した額の負担などを算出して契約解除するのが一般的です。
契約解除を考えている場合、タイミングが遅くなればなるほど、負担額も大きくなるため、早めに決断することが大切です。
そもそも契約解除にならないよう慎重に契約しよう
マンションの売買契約について、契約解除の方法とペナルティについてお伝えしました。
冒頭でお伝えしたようにマンションの売買契約ではさまざまな書類へのサインを経て契約に向けて進めて行きますが、明確にペナルティが発生するのは売買契約締結後です。
売買契約締結前には、契約後はペナルティが発生することを念頭に慎重に手続きを進めることが大切だといえるでしょう。
両親や親戚に話を通しておこう
マンションの売買契約の解除でよくあるのが、売買契約後に両親や親戚の反対にあって契約の解除をしなければならない状況になるというものです。
両親や親戚の知り合いに工務店を経営している人や勤めている人がいる……といったケースがよくあるケースでしょう。
後で余計な負担の発生しないように、売買契約時には自分達だけで決めるのではなく、両親や親戚にも話を通しておくと万全だといえます。
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まとめ
この記事では以下の内容を紹介しました。
マンション契約時にはさまざまな書類に署名する必要がありますが、その中でも売買契約書は特別な意味を持つ書類だといえるでしょう。
勢いで売買契約してしまうのではなく、署名するとペナルティが発生することを念頭に、万全の準備をして手続きを進めることをおすすめします。
売買契約締結という行為は、買主が安易に購入をやめないという売主の安心と買主側からは折角見つけた気に入った物件を売主が他の人に売ってしまうリスクを回避する目的もあります。
つまりこの物件を買うというお気持ちが固まっていればメリットしかないのです。よって契約の前に物件をきっちり見極めておくことが最重要という事になります。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧