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マイホームを購入するには何千万円という資金が必要です。これだけの金額を預貯金などの金融資産のみで準備するのは難しい話なので、多くの方は住宅ローンを利用してマイホームを購入します。
ここで気を付けなければいけないのは、「住宅ローンが払えない」という事態です。住宅ローンは最長35年の長期間のため、どうしても経済状況の変動はつきもの。元の年収の高い・低いに関わらず、住宅ローンが払えない事態に陥る可能性は、誰にでもあります。だから、住宅ローンはなるべくゆとりのある返済計画にしなければなりません。この記事で住宅ローンの注意点をまとめます。皆さんの資金計画の作成にお役立てください。
住宅ローンを滞納したらどうなるのか?
まずは最悪のケース『住宅ローンが払えないとどうなるのか?』から確認していきましょう。住宅ローンの支払いを滞納すると、債務者であるあなたは以下の状況となります。
- 1.マイホームが差し押さえられ、競売にかけられる
- 2.信用情報に延滞などの情報が登録される
それぞれ細かく確認していきましょう。
1.マイホームが差し押さえられ、競売にかけられる
支払いを延滞したら即座にマイホームが差し押さえられるわけではありません。金融機関によって対応は異なりますが、一般的にはまず督促状が送られてきます。競売まで進むケースでも10ヶ月程度はかかります。競売が完了し落札者に所有権が移転すると債務者は強制退去させられてしまうでしょう。
ただし、強制退去の前に落札者から退去の交渉が前段階で行われます。強制退去も落札者に費用がかかるので、交渉による退去の場合は退去費用を支払う落札者もいます。落札者の強制退去に係る費用と退去費用を比較する形ですね。競売から落札までの段階まで進んでしまった場合、退去に関しては落札者と話し合いで解決するのが良いでしょう。
また、住宅ローン滞納を理由にマイホームを売却すると、残債が残るリスクもありますが、残債を超える金額で売れて現金が残るケースもあります。一方、賃貸の場合は出ていくのみです。購入と賃借ともにメリットとデメリットがありますが、月々の居住するための費用は必ずかかる視点は必要でしょう。
2.信用情報に延滞などの情報が登録される
滞納の話になると、ブラックリストという言葉を目にする機会が多くなりますが、このようなリストは金融機関などに存在しません。その代わりに、1度でも延滞をした場合は個人信用情報に『延滞有り』という情報が登録され、この記録は保有期間が終了するまで残ります。
信用情報を基に、車やカードなどの各種審査が行われているので、延滞という記録が残ることは今後の私生活にも少なからずの影響を与えます。数年という短期間で記録が消えることは無いので、気を付けなければいけません。
なぜマイホームを差し押さえられてしまうのか?
最悪の状況が確認できたところで素朴な疑問です。
「住宅ローンが払えないなら売却すれば良いじゃないか」
おっしゃる通り、支払いが出来ないのであれば売却するのが最善です。ですが、住宅ローンの支払いで悩んでいる方の中には『売却したくても売却できない』という方が多く、そんなに単純な話ではありません。では、『売却したくても売却出来ない』ケースを確認してみます。
- 住宅ローン残高よりも売却価格が低い
- 住宅ローン残高と売却価格の差額を現金で補填できない
- 売却諸経費が支払えない
住宅ローンを利用してマイホームを購入すると、対象不動産には金融機関の抵当権が設定されます。不動産を第3者に売却するためには抵当権を抹消しなければならず、抵当権を抹消するためには住宅ローンの全額返済が基本的には絶対条件となるのです。
抵当権とは、住宅ローンの全額返済を担保するための権利で、返済が滞った場合には所有者の意思に関係なく抵当権者は担保物件を差し押さえることができます。このため、どんな状況であれ債務者は住宅ローンを全額返済しなければならず、万が一の際にはマイホームが差押えられてしまう事態になってしまうのです。
住宅ローンが払えなくなった時 2つの対処法
次に、住宅ローンが払えなくなった時の対処法を確認してみましょう。対処方法は主に2つです。
- 金融機関に返済方法の相談
- 任意売却
金融機関に返済方法の相談
金融機関の目的は融資金額の全額返済であり、債務者から不動産を取り上げることではありません。返済が厳しくなってきたなと感じた時は、直ぐに金融機関の担当者に相談してください。返済期間の延長や元金猶予など、状況によっては対策を考えてくれますし、対応してくれるケースもあります。
任意売却
- 『住宅ローンの全額返済ができない』
- 『毎月の支払いも厳しい』
このような状況の方は任意売却の検討です。任意売却とは金融機関と交渉を行い、住宅ローンの全額返済をせずに抵当権を解除してもらい第3者に不動産を売却する売却方法です。
任意売却の注意点は2つ、『残債務が無くなるわけではない』、『全ての方が任意売却できるわけではない』という点。任意売却を多くの方が「住宅ローンの返済が無くなる」と誤解していますが、実際には返済しきれていない『残債務』の返済はその後も継続することになります。住宅ローンの返済が全てなくなるのではありません。付け加えると、誰しもが自由に任意売却を認めてもらえるわけでもないのです。
任意売却を実現させるためには金融機関との交渉が必要不可欠。債務者の経済状況や資産状況など、さまざまな要素を含めての判断が下されますが、交渉自体は不動産会社が行います。皆さんが考えている以上に任意売却のハードルは高いので、安易に実行可能な選択肢ではないことは認識しておいたほうが良いでしょう。
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住宅ローンを滞納しないために、どのくらいの返済額なら無理がないのか
ここまでは『住宅ローンが払えない』という最悪のケースを確認してきましたが、ここからは最悪の状況を回避する方法を見ていきましょう。住宅ローンのリスクを軽減させる方法は一つで、『適切な資金計画を立てる』です。無理のない返済計画を立てておけば経済状況の変化にも対応することができますし、状況に応じて繰上げ返済も検討出来ます。適切な返済計画を立てるポイントは5つです。
- 毎月の支払金額から物件価格を決める
- 修繕積立金の値上げ
- 室内設備の修繕費用
- 家族構成の変化
- 共働きの方は主債務者の収入をメインで
毎月の支払金額から物件価格を決める
マンション購入を検討している方はとくに注意が必要なのですが、物件価格が同じであっても毎月のランニングコスト(管理費や修繕積立金など)が異なれば毎月の支払金額は変動します。賃貸住宅の場合は収入の30%と言われていますが、購入する場合はこれではいけません。固定資産税も考慮し、収入の20%~25%を目安にして毎月の資金計画を立てるのが望ましいでしょう。
修繕積立金の値上げ
修繕積立金は築年数の経過共に増額していきます。新築時は低めの設定となっているので、最終的には2~2.5倍の金額になることを想定しておかなければいけません。
一戸建ての方も同様です。戸数や構造などによって増額幅は異なりますが、自分自身で建物の修繕費用を積み立てていかなければいけません。適切な修繕をしないと、雨漏れなどの原因にもつながりますので、必ず積み立てておくものと考えておきましょう。
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室内設備の修繕費用
マイホームの修繕費用には、先述した『屋根や外壁など躯体構造に関する箇所』と『室内設備に関する箇所』の2つがあります。
室内の設備の修繕費用とは、キッチン、ユニットバス、トイレ、洗面台、給湯器などのリフォーム費用のことです。これらの設備は減価償却資産なので、どんなに丁寧に利用しても利用年数によって故障、不具合が生じてしまいます。水回り設備の寿命は20年前後が一般的と言われていますので、マンション・一戸建てに関わらず毎月2万円ほどを積立てることを想定しておくと良いでしょう。
家族構成の変化
結婚をきっかけにマイホームを購入する家庭は多いのではないでしょうか。現在の家賃をベースに毎月の資金計画を立てる方が多いのですが、家族構成の変化を考慮していない方も意外と多くいます。家族が増えると、食費、雑費、教育費など、毎月の必要経費が想像以上に高くなります。結婚を機にマイホームの購入を検討している方は家族構成の変化を考慮して返済計画を立てて下さい。
共働きの方は主債務者の収入をメインで
最近では夫婦共働き世帯が増加し、以前よりも世帯年収が高くなっています。もし夫婦二人で住宅ローンを組むことを検討している方は、家族構成の変化に合わせパートナーの収入が減少していく事を考慮しなければいけません。
先述していますが、家族が増えれば毎月の必要経費も増加します。パートナーの収入減を前提に主債務者の収入をメインに資金計画を立ててください。
まとめ:マイホーム購入前に適切な資金計画を!
この記事では、主に以下の情報をお伝えしました。
最後に……住宅ローンは、適切な資金計画を立てれば怖いものではありません。『ローンが払えない』と聞くと住宅ローンに対してネガティブな印象を持つ方もいますが、適切な資金計画を立てておけば過度に心配をする必要はないでしょう。
資金計画と物件選びは慎重に、住宅ローンとは末永く良好な関係を保てるように心がけてください。
現在は賃料よりも住宅ローンの返済のほうが安い状態が長く続いています。資金計画をしっかり立てる前提なら、賃貸物件に住み続けるよりも物件を購入するほうが、月々の居住費用は減らせます。総合的に考えると、リスクをきっちり理解したうえでの物件購入が一番のおすすめです。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧