相続時の不動産売却:税金の特例を賢く使おう!

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男性 青空

親から相続した不動産を売却すると、場合によっては税金の支払いが必要になります。多くの方が不動産売却は未経験のことなので、税金がどれくらいかかるのか、どうすれば税金を少なくできるのかは気になるところでしょう。この記事では相続した不動産を売却する際に、税金の支払いを抑えるために使えるさまざまな特例について解説しています。

税金は必ずかかるわけではない

不動産

不動産売却で発生する税金は印紙税・所得税・住民税・復興特別所得税の4つです。印紙税を除いた3つの税金の基本ルールは、「利益(=所得)に対してかけられる」です。逆に言えば不動産を売却しても購入時よりも安い金額で売却することになり、利益が出なければ「譲渡損失」といって所得税(復興特別所得税)と住民税はともにかかりません。

税金は所得に対してかけられます。所得とは得た金額そのもの(=収入)のことではなく、収入から経費や条件付きで適用される特別控除を差し引いたものです。不動産売却においての経費とは土地や建物の購入費や売買の際に仲介業者に支払う費用などが該当します。

ポイント

さまざまなものを差し引いて残る所得が少なければその分かけられる税金は少なくなります。とはいえ、経費を多く使って所得を下げてしまっては、税金だけでなく結局手元に残るお金も少なくなってしまいます。なるべく税金がかからないようにしながら手元にもしっかりと利益を残す、そのためには特別控除を活用することが重要です。

税金を抑えるための特例を知ろう

税金 お金

相続した不動産を売却するときにポイントになるのが、そこに自分が住んでいたかどうかです。それによって受けられる特例が変わってきます。それぞれのパターン別に受けられる特例を紹介します。まずは親が住んでいた物件を相続したものの、そこに自分は住んでおらず、いわば空き家を相続したパターンの特例を紹介します。

1:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

親から相続した空き家を売却した場合に、譲渡所得から3,000万円を控除することができます。これは後述する「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは同時に適用はできません。しかし、「3:マイホームを売ったときの軽減税率の特例」とは重複して適用できます。この特例を利用するための主な要件は以下の通りです。

  • 1981年5月以前に建てられた
  • 相続する直前まで親が一人暮らしをしていた(老人ホームなどに入居していても可)
  • 2023年12月31日までに売却
  • 相続開始から3年目の年の12月31日までに売ること
  • 相続してから事業用として使用したり、人に貸したりしていない

建物を残したまま売却する場合は、現代の耐震基準を満たす必要があります。満たしていない場合はリフォームした上で売却しなくてはなりません。しかし、この特例は土地のみの売却でも適用できるので、基本的には建物を建て壊し、更地にした上で売却するのが一般的です。

監修者から

適用要件で最も重要な点は「マンションは適用除外」という点です。この制度の趣旨が空き家が倒壊などして他人に迷惑が掛からないようにするため、積極的に空き家状態を解消する狙いがあります。よって丈夫で1棟の管理を行うマンションや、築年数の浅い住宅には適用がないのです。

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2:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例

マイホームなどの自分が住んでいる家または以前に所有して住んでいた家を売却する場合に適用される特別控除です。所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで差し引くことができます。つまり、譲渡所得が3,000万円以下になる場合は税金がかからないということです。自宅を売却して利益が出た際にとても重要な特例です。こちらは相続とは関係なく適用できる特例です。

主な要件

  • 現在住んでいる住宅であること
  • 住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること
  • 他の特例を適用していないこと

監修者から:家を売却して、その後家を購入するいわゆる「買い替え」の方は注が必要です。この3,000万円控除を利用すると「住宅ローン減税」が一定期間利用できなくなります。買い替えを検討される方はどちらが得か必ず一度はシミュレーションする必要があるでしょう。

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3:マイホームを売ったときの軽減税率の特例

10年を超えて所有していたマイホームを売却した場合は、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分は通常よりも低い税率で計算する軽減税率の特例を受けることができます。この「10年」は相続してから10年ではなく、親の所有期間も合算することができます。10年を超えた所有であれば、5年以上の所有となり長期譲渡所得扱いで元々税率は低くなりますが、6,000万円以下の部分についてはさらに低くなります。

6,000万円以下の部分の税額の計算式は、「譲渡所得×14.21%(所得税10%+住民税4%+復興特別所得税0.21%)」です。ちなみに、6,000万円を超えた部分に関する税率は20.315%です。

軽減税率適用の主な要件

  • ・売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている。
  • ・他の特例とは同時に適用できない(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例との併用は可)。
  • ・売った年の前年及び前々年にこの特例を受けていないこと。
  • ・親子や夫婦などに売ったものでないこと。

「2:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と「3:マイホームを売ったときの軽減税率の特例」の2つは併用できるというのがとても大きなポイントです。

たとえばマイホームの売却による利益が8,000万円の場合、3,000万円の特別控除を適用することで5,000万円になり、5,000万円は6,000万円以下なので、5,000万円に対してかけられる税率は軽減税率が適用されて14.21%になります。この場合は5,000万円×14.21%=710万5千円 が売却利益に対して支払う所得税と住民税の合計になります。

4:特定のマイホームを買い換えたときの特例

マイホームを、住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却し、元の住宅を売却した価格よりも高い価格の家に買いかえた場合、元の住宅の売却によって生まれた利益に対する課税を、新居の売却時まで延長できる特例があります。税金が安くなるわけではありませんが、後回しにできるのでとても効果があります。これは3,000万円特別控除や軽減税率の特例とは併用できないのでご注意ください。

所得税や住民税は、利益に対してかけられるので、不動産を売却して損失が出れば税金はかかりません。通常は、不動産による損失は、事業所得や給与所得とは別で計算されるため、事業所得や給与所得に対しては通常の税金がかかります。

しかし、一定の要件を満たす場合、不動産での損失を事業所得や給与所得に充当する損益通算が可能になり、税金が抑えられます。損益通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます(合計4年間)。

ポイント

その要件とは売却の年の1月1日における所有期間が5年を超える長期譲渡所得であること。これが不動産を売却して損失が出た場合の基本ルールとなります。以下に紹介する特例も長期譲渡所得であることが条件になっています。

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5:特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

これは住宅ローンが残っている物件を売却して損失が出たときに使える特例です。つまり、住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る金額で売却した場合の特例となります。損失を給与所得や事業所得と損益通算ができ、控除しきれなかった場合は翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます(合計4年間)。

たとえば、会社員で給与所得がある場合、税金は自動的に差し引かれていますが、譲渡損失を申告することで天引きされた税金が返ってくるということです。この特例は住み替えなくても売却すれば適用できます。

主な要件

  • ・住宅の売却日の前日で、住宅ローンの返済期間が10年以上残っていること
  • ・住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること

6:マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

住み替えで損失が生まれた場合も、損益通算が可能です。こちらも一定の要件を満たせば、給与所得や事業所得などから控除でき、控除しきれなければ翌年以後3年にわたって控除することができます。

主な要件

  • ・買い替えた住宅の床面積が50㎡以上であること
  • ・買い替えた住宅について10年以上の住宅ローンを組むこと

売却して損失が出た場合に受けられる2つの特例は、損失に対するフォロー制度です。そのため、売却により利益が発生した際に受ける特例と併用するものではありません。相続した物件を売却した際に受けられる特例はたくさんあります。しかし、適用には確定申告が必要で、自動的に適用されるわけではない点は注意してください。売却時には税金の相談もできる不動産会社と協力して売却に臨むのがおすすめです。

相続時の不動産売却:まとめ

室内

この記事では以下の内容を紹介しました。

監修者:鈴木 良紀

監修 鈴木

経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧