皆さんは「ソニー不動産」をご存知ですか?

「ソニー」と聞くと「ウォークマン」を思い出す方は私と世代が同じです。液晶テレビや家庭用ビデオなど、家電メーカーとしての「SONY」を思い浮かべると思います。

その「SONY」が鳴り物入りで不動産業界参入を果たしたのは2014年の4月です。私も「え?何でソニーが参入してきたの??」とかなり驚きました。

おうちダイレクト

ソニー不動産」は米国型不動産取引制度の「エージェント」制を導入し、顧客満足度重視の営業方針など、日本の不動産市場に変革をもたらす変革者の期待を以てマスコミ各社が大々的に報道しました。

  • 「ソニー不動産って、そんなに顧客満足度が高い業者なの?」
  • 「ソニー不動産に売却を任せると、普通の価格よりも高く売れるというのはホント?」
  • 「ソニー不動産は手数料が無料(安い)という話は本当?」

売却相談をされる方からソニー不動産について多くの疑問や質問を受けます。

では「ソニー不動産」とはどのような不動産業者なのでしょうか?その口コミや独特の仲介手数料の支払い制度などをお話しましょう。

ソニー不動産の口コミとエージェント制の検証

2014年に誕生したソニー不動産とは何か?

ソニーが不動産業界進出にあたって掲げたのが、

  • エージェント制の導入
  • 両手取引の放棄
  • 不動産業界にAIを導入

この3点でした。

アメリカでは売主側の代理人を「セラーズ・エージェント」、買主側を「バイヤーズ・エージェント」と呼び、日本の「両手取引」である「双方代理」は行っていません。

「エージエント制」の導入は米国流不動産取引のしくみを日本の不動産市場に持ち込んだわけですが、その核心は「両手取引の放棄」です。

両手取引とは

初めてお読みになる方のために「両手取引」とは何かを簡単に説明します。例えば売主からマンションの売却を任されたA社が広告宣伝の結果、自ら買主を見付けることができた場合、売主・買主双方から宅建業法上の規定である「売買金額の3%+6万円(税別)を上限とする金額」を仲介手数料として貰うことができます。

これに対し、REINS(レインズ=不動産適正取引推進機構のオンライン)を見たB社が買主を見付けた場合、A者は売主からのみ、B社は買主からのみ仲介手数料を貰います。このことを業界用語で「片手」と言います。

不動産会社や担当者の中には「両手取引」を狙って、自分で買主を見つけようとしその結果、売却期間が長期化したり値引きに応じてしまいます。不動産会社は家が何円で売れようが、仲介手数料がだけが収益なので、手数料をダブルでもらえる両手取引にこだわるところがあるのです。

しかし、そんな取引は売主にとっては不利ですよね。「ソニー不動産」は「両手取引」の放棄を掲げ、真に「売主」「買主」それぞれエージェントが担当する側のみ仲介をするとしたのです。「両手取引の弊害」は本サイトの別記事に詳しく書かれていますので是非ご参照下さい。

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Google Mapとデータを組み合わせた情報システム

「ソニー不動産」はIT技術を駆使した独自の物件情報システムを開発しました。

現在はGoogle Mapのストリートビューを使い、スマホ画面で周辺環境を見られる時代になりました。

「ソニー不動産」はGoogle Mapとマンションの物件データーベースをドッキングした「ソニー不動産物件探索MAP」「不動産価格推定エンジン」を独自開発しました。不動産の売り出し価格・成約価格をGoogle Map上ですぐ確認できます。

YAHOO JAPANと共同で不動産売買プラットフォーム開設

おうちダイレクト

2015年の7月に「ソニー不動産」はYAHOO JAPANと提携。トップページに「不動産売買プラットホーム」として「おうちダイレクト」を11月から開始しました。

家を売りたい方が不動産会社を通さずメルカリのように自分の家を出品し、おうちダイレクトをみて家を買いたい方が決まったら仲介手数料0円で売買成立するとこともできるという画期的な仕組みです。

おうちダイレクト公式ページ

と言っても、一般人は家の契約とか不安ですよね。「ソニー不動産」が取引をサポートしたり、おうちダイレクトと提携している他の不動産会社に査定や仲介を依頼することもできる不動産取引マッチングシステムです。詳細は動画もありますので、サイトを直接ご覧下さい。

既存の不動産業界からの圧力

なお、これに対し宅建業者の加盟する2つの団体「全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)」=鳩のマークと「全日本不動産協会」(ウサギのマーク)が反発し、2016年1月YAHOO不動産への物件情報提供の中止を発表しました。

それだけでなく大手業者が加盟する不動産流通経営協会(FRK)は2015年10月既に提携解消に合意。物件の情報提供を中止しています。

大手業者・中小零細業者の団体とYAHOO不動産+ソニー不動産との「仁義なき戦い」という物騒な口コミもネット上に書かれています。まあ、既存の不動産業界とは違った動きをしたのですから、こうした反発はソニー不動産誕生時から業界人の多くが予想した通りのことでした。

なお、反発の高まる中、「おうちダイレクト」は投資物件も扱うなど、独自路線を突き進んでいます。このように「ソニー不動産」は、かつて日本の不動産市場を変えると言っていた「アイ・ディー・ユー」「マザーズオークション」社長だった故・池添吉則氏が提唱していた「米国流不動産取引」の導入と既存不動産市場の変革を着実に進めています。実は「ソニー不動産」の下地にはこうした先駆者の「イズム」が流れていることを知る人はほとんどいません。

ソニー不動産の口コミは玉石混合だが本当の所は?

不動産会社 スタッフ

この記事を書くにあたり、ネット上に掲載されている口コミをかなり読みましたが、賛否両論入り乱れて「玉石混合」状態になっています。

しかも批判者は「ボロクソ」な表現で罵っていますし、賛同者は「歯が浮くような褒め台詞連発」「メリットだけを書き連ね、デメリットを何も書かないベタ褒め」です。これだけ両極端な口コミの乱立の理由は明確です。

ズバリ言います。

  • 「ボロクソ」の批判は中小零細を含む不動産業界関係者
  • 「ベタ褒め」しているのは宣伝広告費として紹介料を得ているアフィリエイター

私はソニー不動産の元社員の知人がいますし、直接書けない内部事情も耳にしています。それゆえ不動産鑑定士として公平の観点から「ソニー不動産」の口コミを紐解いていきます。

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不動産鑑定士が「ソニー不動産」の口コミを紐解く

不動産 営業マン

両手取引は本当に『悪』なのか?

まず私が思う第一の命題は、「両手取引は本当に『悪』なのか?」ということです。両手取引の弊害については、下記の関連記事に詳細を記載してあるので是非お読み下さい。

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確かに両手を狙うために物件の「囲い込み」が問題とされましたが、しっかりと「オープンマーケット」で他業者に情報を開示し、正当な営業行為の結果、両手取引をしている業者もいるのです。私自身、営業マン時代と独立後も「両手取引」を何度も行っています。「囲い込み」などしていません。

一刀両断で「両手取引は『悪』だ」という考え方は大間違いだと強く思います。

ソニー不動産は、なぜ両手取引を放棄をするのか?

二番目の命題は、「なぜ両手取引を放棄をするのか?」です。

ソニー不動産が誕生する以前から不動産業界は「買主手数料無料!」「売主手数料無料!」を謳い文句にする不動産業者が乱立していました。YAHOOや@niftyなどのポータルサイトに出てくるPPC広告も「手数料無料」業者がバンバン出ておりました。

(参考)

実は私自身、「両手放棄」のビジネスモデルを事業計画書に書いて国民生活金融公庫へ出向いたことがあるのです。その時公庫の担当者は、私の書類を読むなり「先程の(不動産)業者さんも『両手放棄』のビジネスモデルでしたよ」とハナで笑われ融資は否決でした。お恥ずかしい話ですが、事実、それだけ「両手放棄」する業者が既に多数存在していたのです。

では何故、業者が「両手放棄」をするのか?

これは「ソニー不動産」の戦略についても言えることですが、これもズバリ言います。「集客」です。一にも二にも集客することが目的です。

両手放棄をして集客する作戦

「両手放棄」することで利益を半分にする替わりに、既存大手業者の圧倒的なブランド力と集客能力に立ち向かって顧客を集める作戦です。電子機器メーカーでは「天下のSONY」も、不動産業界では「ベンチャー企業」の位置づけです。従来通りの広告宣伝方法では「SONY」ブランドといえども既存大手に敵いません。

そこで得意分野ともいえるIT技術力を駆使した徹底的な効率化によって、両手放棄で半減する売上を、機動力で二倍以上獲得する環境を整えたと言えるでしょう。

「ソニー不動産」以前の「両手放棄」はほとんどが新築建売業者やリノベーション業者から満額手数料を貰う替わりに、買主からの手数料は「ゼロ」にするモデルでした。

しかし、ソニー不動産の作戦は米国流「エージェント方式」を取り入れ「売主」「買主」の担当部署を社内でも分割し、それぞれ「売却部隊」は「売主」だけ、「購入=客付け部隊」は「買主」からだけ手数料を貰うことで、「売り」「買い」双方共に「手数料無料」を謳い文句に集客することにあります。

社内両手の矛盾

ここでいくつか「口コミ」でなく、ジカに私に相談されたお客様の話からも様々な矛盾があるようです。

例えば「社内両手」の問題です。「セラーズ・エージェント」(=売却担当)」と「バイヤーズ・エージェント」(=買い担当)とがたまたま社内同士で結びついた時、結局社内で「両手」取引をしてしまっていると聞きます。

「ソニー不動産」も営業目的の法人ですから、利潤追求は当然です。私は決して「悪い」とは思いません。しかし、声高らかに「両手放棄」を掲げて市場参入した以上、「矛盾」を問われても仕方がありません。

ソニー不動産は仲介手数料が無料?

パソコンで調べ物をする女性

いやいや、そんなことはありません。

「仲介手数料」が無料になるのは「ソニー不動産」がYAHOOと提携して運営している「おうちダイレクト」を使って完全に自分で契約・決済まで全部こなした時の話に限ります。

手続きだけならば不動産投資家などは自分で手続きできるかもしれませんが、買主までおうちダイレクト内で見つけるのは難しいかなと。運がよければ0円も実現できるかもしれない程度の話だと思います。

おうちダイレクトで自ら売却の全てをこなせば無料

「ソニー不動産」がYAHOO不動産との提携で行っている「おうちダイレクト」を使い、売主が内見から契約決済まで全部自分で行った場合、本当に「仲介手数料」は無料です。

しかし、不動産知識のない一般個人が契約行為や決済までの一連の流れをこなせるとは思えません。そこでソニー不動産がサポートするのですが、「仲介手数料」は「無料」でも、何らかの名目で費用負担を求めています。これも商売ですから、人件費と時間を掛けて「全部無料です」という方が逆におかしいと思います。

ネット上の口コミはともかく、ダイヤモンド社や日経など経済系雑誌のWEBサイト記事は単なる「噂話」を書くようなことはしません。口コミサイトはアフリエーターが沢山立てていますので、正しい情報を見極める「目」をもって下さい。

おうちダイレクト公式ページ

ソニー不動産の口コミ・評判:まとめ

住宅 不動産

WEB+地元密着の大手VSソニー不動産IT戦術との対決

「ソニー不動産」は上手に利用すればメリットはあると思います。ただし、営業マンは両手放棄で2倍の労働力と時間を求められてヘトヘトです。

「ソニー不動産」はマンションのある1都3県しか営業エリアがありません。地方都市で新築マンションが3,000万台、中古が1,000万台の地域では手数料が低くビジネスが成り立たないからです。

あるブログ上の表現が的を突いていました。「大手はWEBサイト+地場密着のハイブリッド型」「ソニー不動産はWEBサイト特化型」であると。確かに効率良く机上査定がGoogle Map上で瞬時にできたとしても、我々鑑定士や業者の新人教育でも叩き込まれる「不動産は現地を見ないと始まらない」という鉄則は、いくらIT化が進んだ現在でもアナログのままなのです。

不動産鑑定士・宅建取引士。1966年生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。野村不動産(株)流通営業部(現・野村不動産アーバンネット株式会社)のリテール向け売買仲介営業マンから不動産鑑定士に転身。独立後約10年間法人経営者として宅建業・鑑定業を営む。法人の営業譲渡後「神林不動産鑑定士事務所」代表として執筆活動や不動産コンサルタントを行っている。