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住宅ローンが残っている状態で引っ越しを余儀なくされることは、けっして珍しくありません。このような時に、今の自宅をどうすれば良いのか?この記事でまとめました。売却、賃貸……それぞれにメリット・デメリットがあります。
住宅ローンが残ったまま引っ越しはできる?
住宅ローンは、契約者本人が自己居住用に組むためのローン。つまり、契約者本人がその家で生活するのが大前提です。そのため、転勤や親の介護などの事情で引っ越しをせざるを得ない状況でも、必ず銀行に報告すること。
やむをえない状況での引っ越しならば、ほとんどの銀行でスムーズに対応をしてくれます。まずは、銀行が住宅ローンを抱えたままの引っ越しを、許可してくれるのかどうかを確認しましょう。金融機関が確認したいポイントは、以下の3つです。
- 引っ越しの事情
- 引っ越し先の住居費
- 残債の額
住宅ローンを抱えながら引っ越しするときのポイント①:引越しの事情
転勤や介護のようなやむを得ない事情による引っ越しの場合、銀行側も柔軟な対応をしてくれることがほとんどです。次いで、転職や実家の両親との同居などの家庭の事情での引っ越し。これらが理由の場合も、転勤や介護ほどではありませんが、比較的承諾を得やすいと考えられています。通勤や通学の利便性のための転居や、近隣トラブルに伴う引っ越しもかなり現実的ですが、一般的にはこのあたりから銀行の対応が厳しくなってきます。
住宅ローンを抱えながら引っ越しするときのポイント②:引っ越し先の住居費
引っ越し先で新たに家賃が発生する場合や住宅ローンを組まなければならない場合は、銀行の対応がかなりシビアになります。家賃または住宅ローンが新たに発生し、住居のための費用が二重にかかるためです。当然、銀行は住宅ローンの返済の心配をします。一方、社宅や実家へ住むことになる場合は、新たな住居費がかからないため、比較的銀行の対応も緩やかです。
住宅ローンを抱えながら引っ越しするときのポイント③:残債の額
状況や住宅ローンの残高に応じて、これまでに住んでいた自宅を売却するか賃貸のどちらかを決めることとなります。では、自宅の売却を選んだ場合、賃貸を選んだ場合、それぞれのケースを見ていきましょう。
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売却:自宅を売却して住宅ローンを返済
自宅の売却だけでは住宅ローン完済とならないことも
一般的には売却代金で住宅ローンの残債を一括返済します。しかし、自宅の売却価格によっては、住宅ローンを返済しきれずに残債が残ってしまうことも。その場合、自宅の売却後も住宅ローンを毎月返済していくことになります。
借り換えローン
住宅を売却しても現在のローンが残ってしまう……そんな方は買い替えローンを検討するべきです。買い替えローンとは、今所有している物件を売却しても残ってしまうローンと、新しく物件を購入するためのローンを、合わせて組むことができる住宅ローンです。
わかりやすいように4,000万円の物件に住み替えるシュミレーションをしましょう。(35年ローン、変動金利1.2%)
現在住んでいるマンションのローン残高が2,000万円、査定額は1,500万円と仮定します。この場合、500万円のローンが残ってしまうので、500万円は手持ち資金から捻出しなくてはいけません。その「不足分の500万円」と「新しく買う物件4,000万円」の計4,500万円のローンを合わせて組むのが「買い替えローン」です。
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ダブルローン
借り換えローンは、今の自宅を売却するのが大前提です。自宅を売却してもローンが完済できない……そんな時に借り換えローンが利用されます。一方、ダブルローンは現在抱えているローンとは別に新たなローンを組みます。
当然、ダブルローンは銀行の審査が通りにくいのですが、「どうしてもダブルローンにしたい」という方もいるでしょう。そういう方に向けて、ダブルローンの審査が取らなかった方用の解決策を紹介します。
住宅ローンの審査が通らなかった方へ①:ローンの名義を変更する
旦那さんに住宅ローンがあっても、奥様にも収入があれば奥様名義でローンを組めるかもしれません。もちろん、奥様が働いていることが前提で、年収や勤務先、勤務年数などを加味した上で、通常の住宅ローン審査に通る必要があります。もしも、奥様の住宅ローンの審査が通れば、売却ではなく賃貸という選択肢も可能です。
住宅ローンの審査が通らなかった方へ②:投資用ローンで住宅を購入する
住宅ローンではなく、投資用ローンでお金を借りて新たな住宅を購入する方法もあります。投資用ローンにも審査はありますが、住宅ローンと比べると審査が緩い機関も少なくありません。ただし、投資用ローンは金利が3%以上。通常の住宅ローンよりも金利が高いので、月々の支払い金額が増えるデメリットもあります。
住宅ローンの審査が通らなかった方へ③:借り換え
根本的な解決にはなりませんが、当初の借り入れから5年や10年以上経っている方は、金利の低い他の金融機関に借り換えるだけで数百万円の軽減効果が出ることもあります。
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住宅ローンが残っている自宅を売る時の注意点
住宅ローンが残っている自宅を売る時は、引き渡しまでに住宅ローンを完済して買主に引き渡すことが前提です。そのため、しっかりとした売却計画が必要になります。現実的な売却方法の1つは、任意売却でしょう。
任意売却
任意売却とは、銀行など金融機関の許可をもらい不動産業者に仲介してもらって売却する手続きです。通常はローンの残債を現金で清算できなければ、金融機関が自宅の売却を認めてくれることはまずありません。しかし、金融期間と話し合い、同意をいただければ売却できるようになります。ただし、任意売却には手続きに3~6カ月ほどの時間がかかるので、早めに行動するようにしましょう。
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賃貸:住宅ローンが残っている自宅を賃貸に出す
続いては、引っ越しをきっかけに今の自宅を賃貸に出す時の説明をします。
住宅ローンの残る家を賃貸に出すときの注意点①:事業主になる自覚
たとえ会社員でも、家賃収入を得るようになると個人事業主扱いです。当然、事業者としての責任と貸主としての義務も生じます。突然の設備故障による修繕費の支出や空室リスクなどもあるでしょう。義務やリスクなどを軽減したいのならば、不動産会社とサブリース契約を結ぶと良いです。
また、賃貸に出すと管理の問題が常につきまといます。家賃の管理はもちろん、苦情や設備の修繕などにも対応しなくてはなりません。自分で管理できる自信がないのであれば、やはり不動産屋に管理を任せるのが安心でしょう。ただし、不動産会社と契約をするともちろん家賃収入は減ります。
住宅ローンの残る家を賃貸に出すときの注意点②:事業用ローンへ借り替えになる場合も
住宅ローンにはさまざまな恩恵がありましたが、賃貸に出すと住宅ローンが適用されずに事業用や賃貸住宅向けの融資に切り替えとなることもあります。これらの融資は住宅ローンに比べれば金利も高く、短い返済期間となることが多いでしょう。毎月の返済額は今までの住宅ローンよりも高くなります。
住宅ローンの残る家を賃貸に出すときの注意点③:金融機関からの承諾が必要
金融機関の承諾を得ずに、無断で賃貸してしまう行為は契約違反にあたります。もともとは自己居住用住宅の取得のための資金借り入れだったのですから、用途が変わったのなら報告をするべきです。ただし、賃借を認めてくれるような金融機関は少ないと考えておいてください。
「金利優遇」の割引適用を受けないことや、事業用の不動産投資ローンに借り換えることを条件に、第3者への賃貸を承諾する金融機関もあります。するとローンの金利は上がりますが、契約違反による契約解除という最悪の結末は避けられるでしょう。
住宅金融支援機構フラット35について
住宅金融支援機構フラット35には、住宅ローンを借りている方の事情に配慮した対応があらかじめ用意されています。転勤、転職、病気などの事情によらず、住所変更届のみの提出で転居が可能です。
ただし、賃貸に出す場合は借り手が付かず家賃収入が入ってこない空室リスクや物理的なリスクに備えた対策も必要。空き室リスクはローン返済が苦しくなるので、家賃を保証するマイホーム借上げ制度などを検討すると良いでしょう。
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数年後に戻ってくる予定ならば……
転勤の期間が決まっており、数年後に帰ってくるのが確実な場合は「定期賃貸借」で賃貸に出す必要があります。一般的な賃貸借契約で賃貸に出してしまうと、現在の法律では入居者の方を優先して保護する内容になっているからです。
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住宅ローンを残したままの引っ越しは、まず金融機関への報告・相談
この記事では以下の内容を紹介しました。
どんな形での引っ越しであってもは、まずはローンを借りている金融機関に相談することです。その上で、自分達にどのような選択肢があるのかを知ってください。1人で悩まずに専門家の力を借りることです。
この記事は『住み替え王子』で何度か特集した「住宅ローンが残っている状態での住み替え方法」をまとめたものです。それぞれの項目にあるリンク先には、さらに詳しい情報を載せていますので、是非ご覧になってください。
監修者:鈴木 良紀
経歴:東京理科大学卒業。大手ゼネコン、ディベロッパー、不動産ファンドを経て、(株)ウィルゲイツインベストメントの創業メンバー。不動産、法律に広範な知識を有し様々なアセットのソリューションにアプローチ。保有資格:宅地建物取引士、ビル経営管理士、一級土木施工管理士、測量士補。執筆活動:投資僧